2006 Fiscal Year Annual Research Report
中質量ブラックホールの観測的実証と臨界降着における放射機構の解明
Project/Area Number |
17030011
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
久保田 あや 独立行政法人理化学研究所, 牧島宇宙放射線研究室, 基礎科学特別研究員 (00391938)
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Keywords | X線天文 / ブラックホール / 超光度X線天体 / モデル計算 / 「すざく」衛星 / 質量降着 |
Research Abstract |
近傍銀河に知られる超光度X線天体(Ultraluminous X-ray source ; ULX)は、恒星質量ブラックホール(BHB:太陽の10倍程度の質量)と活動銀河中心核に存在する超巨大質量ブラックホールの失われた環をつなぐ中間の質量をもつブラックホールとして期待されている。本研究は、高降着率でのBHBのエネルギー解放機構をX線観測と放射のモデル化によって理解し、同時にこれをULXに応用することでULXの正体を解明することを目的とする。昨年度の結果をうけ、今年度は、以下のように研究を進めた。イギリスのクリス・ドーン博士と共同で、BHBからの放射を降着円盤および高温コロナのエネルギーバランスを考慮した放射モデルを構築し、XTE J1550-564というBHB天体のX線スペクトルに応用し、高降着率ではコロナによるエネルギー解放が40%にも達することを示した。また、昨年度打ち上げられた日本のX線天文衛星「すざく」の運用支援に参加するとともに、この衛星で観測された4U1630-472というBHB天体のデータを解析し、この天体から巨大な質量放出を確認し、高降着率で輝くブラックホールのエネルギー解放には、放射とともに質量放出が重要であることを示した。さらに、これらの成果を「すざく」衛星で観測されたNGC1313銀河の二つのULXに応用し、二つのULXが高降着率で輝く中間質量ブラックホールである可能性を強化した。これらの成果の一般性を確認するため、「すざく」衛星の第2期公募観測に応募中である。
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