Research Abstract |
我々は銅イオン交換ゼオライト(特にMFI型:CuMFI)が室温で窒素分子と特異的に相互作用することを見いだした.しかし,窒素吸着活性な銅イオンの状態について十分な情報は得られていない.この点を明らかにすることはより高活性な窒素吸着剤の開発のためには不可欠である.これまで,我々はX線吸収,蛍光,赤外分光法などを利用した研究を行い,ゼオライト細孔内で安定化された一価の銅イオンが窒素ガスの吸着特性に重要な役割を果たしていることを明らかにした.次ぎなる段階として,細孔内に形成された,窒素に対して吸着活性な一価の銅イオンの電子状態や局所構造をサイト選択的に解析することが重要である.ところで,一価の銅イオンは特異な発光スペクトルを与えることがわかっている.本研究では,この一価の銅イオンの発光を利用し,光検出XAFS法によって,銅イオン交換ゼオライトについて窒素の吸着サイトである一価の銅イオン周りの状態を原子価及びサイト選択的に解析する.さらに,本法を選択的構造解析法として確立することを目指している. 室温でのN_2吸着に対して著しく高活性なCuMFIの調製法を開発した.その交換法は,室温で,Cu(CH_3COO)_2溶液にNH_4CH_3COOを加えた溶液を用いてイオン交換を行うというものである.この試料に吸着された窒素の状態をIR, DRS, ESR吸着熱PE, XAFS測定により検討した.これらのデータより,次のような特徴を明らかにした.(i)この方法でのイオン交換の特徴は窒素吸着に対して活性なイオン交換サイトで選択的に銅イオン交換可能であった;(ii)イオン交換された二価の銅イオンは真空中での熱処理により88%のイオンが一価イオンに還元された;(iii)吸着窒素と銅イオンの間の伸縮振動数は360cm^<-1>とわかった:(iv)吸着熱は90-60kJ/molと求まった.XAFS法をこの系に適用し,窒素吸着活性な一価銅イオンの状態解析を行った.後者の方法はCu-K核の電子をX線で励起し,可視光領域での発光(一価の銅イオンからの発光)を検出することによって,銅イオンの状態解析を行う方法であり,サイト選択的状態解析ができると期待している.種々の分光法によるデータを含めて,ゼオライト中にイオン交換された,三配位銅イオンが室温での窒素吸着の活性サイトであるという結論を得た.
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