2005 Fiscal Year Annual Research Report
表面吸着および結晶状態のフォトクロミック分子の構造と形態変化のレーザー分光計測
Project/Area Number |
17034052
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関谷 博 九州大学, 大学院理学研究院, 教授 (90154658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 和彦 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (80213825)
迫田 憲治 九州大学, 大学院理学研究院, 助手 (80346767)
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Keywords | フォトクロミズム / ジアリールエテン / 結晶 / ラマン分光 / 密度凡関数計算 |
Research Abstract |
1,2-bis(2,5-dimethyl-3-thienyl)perfluorocyclopentene (DMTF)微結晶のフォトクロミック反応を電子スペクトルと振動分光を用いて調査した。DMTF開環体の微結晶と閉環体の微結晶のFTラマン分光を行い、それぞれの分子に特有のラマンバンドを1500〜6500cm^<-1>領域に観測した。開環体微結晶に365nmの紫外光を照射して、開環体分子に囲まれた微量の閉環体分子を生成させた。閉環体分子、および開環体中に生成した閉環体分子の拡散反射スペクトルを測定したところ、開環体中の閉環体分子の吸収ピークは閉環体分子の吸収ピークから約2000cm^<-1>レッドシフトしていることが分かった。同様な結晶を作成し、ラマン分光を行ったところ、開環体中の閉環体の1551cm^<-1>と1593cm^<-1>の2本のラマンバンドが閉環体微結晶の対応するラマンバンドからそれぞれ7cm^<-1>、8cm^<-1>ブルーシフトすることが示された。これらの振動はチオフェン環の骨格振動と帰属され、振動数の変化は、X線結晶解析から示された開環体結晶中の閉環体のS...S間の距離が0.24A伸びる構造変化と対応している。この結果は、今後、時間分解分光ラマン分光によって、結晶中の閉環反応における分子の構造変化をピコ秒オーダーで追跡できることを示しており、基礎データとして重要である。密度凡関数法を用いて孤立状態の閉環体分子及び開環体結晶中の閉環体分子のS_0状態とS_1状態のエネルギーの計算を行った。開環体中の閉環体分子のエネルギーは、S_0状態、S_1状態共に閉環体中の閉環体分子より著しく不安定であるが、S_0状態の方がS_1状態よりも更に不安定であるために、開環体中の閉環体分子の遷移エネルギーは約3000cm^<-1>レッドシフトする。この結果は、拡散反射スペクトルから得られた遷移エネルギーの変化と一致する。
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