2005 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍選択的血管内皮細胞障害物質フェニラヒスチンを戦略分子とする分子創薬基盤研究
Project/Area Number |
17035085
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
林 良雄 京都薬科大学, 薬学部, 助教授 (10322562)
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Keywords | 合成化学 / 分子認識 / 癌 / 生体分子 / 薬学 / フェニラヒスチン / 血管内皮細胞障害 / ジケトピペラジン |
Research Abstract |
最近,抗がん剤として利用されている微小管作用薬の中には,がん組織に新生される未熟な血管内皮細胞を選択的に障害できる化合物があることが解ってきた。本障害による血流の途絶は,がん細胞の増殖に必要な栄養と酸素の供給を遮断することから有用な抗がん剤開発に繋がると言える。このような腫瘍新生血管内皮細胞障害剤(VDA)として,天然より単離された低分子量環状ジペプチド「フェニラヒスチン」(PLH)に注目し,生体機能分子創製として,医薬品開発を最終目標に分子構造を基盤としたVDAの創薬研究を展開している。既に,PLHの化学修飾及び全合成研究から活性に必須な構造的要因を見いだしており、これを基に強力な活性を有する生体機能分子の創製を実施した。特に,誘導体の合成に基づく構造活性相関研究から,ヒト大腸がん由来細胞HT-29に対し,強い殺細胞活性を有する複数の誘導体を得た。そして,これらの分子がtubulin分子に厳格に認識されており,僅かな構造変換が活性に大きく影響することを明らかとした。また,得られた誘導体の一つであるKPU-2は,既存の微小管作用薬と異なり,パクリタキセル耐性腫瘍株に対してもin vitroで強い殺細胞活性を示した。またさらに,腫瘍新生血管内皮細胞障害作用のin vitroモデルであるヒト臍帯由来血管内皮細胞(HuVEC)を用いた蛍光物質透過試験より,KPU-2は他の微小管作用薬に比べ強力なVDAであることも明らかとなった。現在、PLH誘導体の微小管阻害機構解析のために、蛍光プローブ化誘導体の合成を進めている。PLH誘導体はdrugableな低分子化合物であり、新しいがん化学療法剤として開発を期待している。一方,別の生体機能分子創製として,光に応答しintactなAβ1-42を産生できる"光応答型クリックペプチド"の創製にも成功した。本ペプチドはアルツハイマー病の原因特定の研究に有効に利用できると考えている。
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Research Products
(5 results)