Research Abstract |
アニオン性金属酸化物クラスターであるポリオキソメタレートを構成ブロックとした多孔性固体の構築を行った.これまでに,Keggin型ポリオキソメタレート(マクロアニオン)をアルカリ金属イオンやカチオン性遷移金属錯体(マクロカチオン)とイオン性相互作用により複合化すると,親水性空間を有するイオン性固体が得られることがわかっている.一方,有機物質の貯蔵・変換プロセス開発の観点からは,イオン性固体のナノ空間への疎水性の付与が重要である. Keggin型ポリオキソメタレート[α-SiW_<12>O_<40>]^<4->,マクロカチオン[Cr_3O(OOCC_2H_5)_6(H_2O)_3]^+及びK^+の複合化により,イオン性固体K_2[Cr_3O(OOCC_2H_5)_6(H_2O)_3]_2[α-SiW_<12>O_<40>]・3H_2O…[1a]が得られた,1aは結晶水を含む親水性チャネルと,マクロカチオンのプロピオン酸イオン架橋配位子に囲まれた疎水性チャネルを併せ持つ.1aを真空排気すると,結晶水が脱離してゲストフリー相1bが得られる.1aは1bとほぼ同じ構造を有した.1bの収着等温線を測定したところ,全相対圧において水よりもC1〜C3アルコールを多く収着し,一方で疎水性分子であるメタンやクロロカーボンは収着せず,1bは両親媒的な収着特性を示した.相対圧0.6における1bの水収着量の経時変化は一次の速度式で再現され,得られた速度定数は水分子の親水チャネルへの収着に対応すると考えられる.一方,エタノール収着量の経時変化は速度定数の異なる一次式の和として再現され,二つの速度定数はそれぞれ親水チャネル,疎水チャネルへの収着に対応すると考えられる.また,1bの収着エタノール分子のin situ IRスペクトル(OH伸縮振動領域)には二つの吸収帯が観察され,3290cm^<-1>の吸収帯強度は低相対圧から増加して相対圧0.4程度で一定になるのに対し,3470cm^<-1>の吸収帯強度は低相対圧では小さく,相対圧0.5を超えると急激に増加した.OH伸縮振動の吸収帯位置は水素結合の形成により低波数シフトすることから,3290cm^<-1>,3470cm^<-1>の吸収帯はそれぞれ,、親水チャネル,疎水チャネルへ収着したエタノール分子に由来すると考えられる.従って,エタノール分子は低圧(相対圧<0.5)では主に1bの親水チャネルに,高圧(相対圧>0.5)では疎水チャネルに収着されることがわかった.
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