2005 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ多面体クラスタSi20およびGe20系超伝導体
Project/Area Number |
17038001
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷垣 勝己 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60305612)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊代 良太郎 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00396417)
|
Keywords | クラスレート / フォノン / 超伝導 / ラットリング / 結晶構造 |
Research Abstract |
IV_<100>系クラスレートは、開いたケージをもっており、内部原子の異常な熱振動の影響が、より顕著に物性に現れると考えられている。これまでにゲルマニウムクラスレートに関しては種々の研究が行われており、特に2元系のBa_<24>Ge_<100>では200K付近に相転移が見られることから詳細な研究が行われ、T_c=0.24Kの超伝導体であることが報告されていた。最近になってBa_<24>Ge_<100>と同構造のシリコンクラスレートであるBa_<24>Si_<100>が合成されたが、超伝導は報告されなかった。本研究では、これらのクラスレートの電子構造ならびに電子状態を詳細に研究する事により、結晶学的に同構造のシリコンとゲルマニウムから構成される物質の電子状態を比較する事を目的として研究を進めた。その結果、従来は超伝導が発現しないと考えられていたBa_<24>Si_<100>でT_c=1.4Kにおいて、超伝導の発現を抵抗測定により確認する事に成功した。同構造のシリコンクラスレートとゲルマニウムクラスレートとで超伝導状態が確認されたのは、これらの物質が初めてである。これらの物質の圧力下における、抵抗の温度変化についても評価を行った。その結果、Ba_<24>Ge_<100>では圧力の印加に伴い、超伝導転移温度T_cが劇的に大きくなり、常圧時の数十倍にもなるのに対して、Ba_<24>Si_<100>では逆にT_cが減少する方向に向かい、その変化は、Ba_<24>Ge_<100>と比べてかなり小さなものであった。さらに両物質のMEM解析を100Kにおいて行なった結果から、Ba原子の電子分布がBa_<24>Ge_<100>で、Ba_<24>Si_<100>に比べて極端に異方性が大きく特異であることを確認した。これにより、両物質のラットリングモードの違いを直接観察することができ、このことが等構造である両物質の物性に大きな違いをもたらしている可能性を指摘した。
|