2005 Fiscal Year Annual Research Report
異常量子物質に対する共鳴非弾性X線散乱の理論的研究
Project/Area Number |
17038003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
筒井 健二 東北大学, 金属材料研究所, 研究支援者 (80291011)
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Keywords | 共鳴非弾性X線散乱 / 銅酸化物高温超伝導物質 / 梯子格子銅酸化物 / 数値的厳密対角化法 / 電荷励起スペクトル |
Research Abstract |
第三世代の放射光を用いて,銅酸化物高温超伝導物質等の遷移金属酸化物に対するK吸収端共鳴非弾性散乱(RIXS)の実験が国内外で集中的に行われはじめている.遷移金属のKやL吸収端付近のX線の波長は格子定数程度であるため,散乱スペクトルにおけるX線の波数変化依存性が測定可能である.これは,これまでの高エネルギー分光でなされてきたような軌道のエネルギー準位を決定するということだけに止まらず,系の集団励起や電子の遍歴性等の情報もRIXSから引き出せることを意味する.本研究では数値的厳密対角化法と呼ばれる手法を用いてRIXSスペクトルの計算を行うことによりその観測理論を構築していく.本年度は特に梯子格子系でのRIXSスペクトルの理論を構築している.梯子格子にホールを少量ドープした場合と,ドープする前を比べると,RIXSスペクトルはほとんど変化せず,ドープする前の波数依存性が残ることが明らかになった.これは二次元系のRIXSの場合と対照的である.つまり二次元系の場合,ホールによって反強磁性に並んだスピン配置が急激に壊されるのに対し,梯子格子系では,それぞれの横桟で組んだスピン一重項状態が,ドープに対しそのまま残るためと考えられる. また,水木グループによりSpring-8で行われた,YBa2Cu307-d(YBCO)及びNd2-xCexCu04(NCCO)に対するRIXSの実験データに対する解析も行った.YBCOの実験で得られたRIXSスペクトルにおいては,Cu02面からの寄与とCu0鎖からの寄与があることを見いだした.そしてCu0鎖における電荷移動エネルギーがCu02面のそれに比べ小さいということが明らかになった.NCC0においては実験から得られたゾーン・センター付近のスペクトルがザン・ライスバンドからCu上部ハバードバンドへのバンド間励起であり,ブリルアン・ゾーン全体に現れる波数依存を持ったブロードなスペクトルがバンド内の励起であることが分かった.バンド内励起のブロードなスペクトルは,電荷励起スペクトルの特徴と一致し,その振る舞いが実験的に初めて観測されたことになる.
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Research Products
(4 results)