2005 Fiscal Year Annual Research Report
幾何学的フラストレーションを有する系の超伝導と量子輸送の研究
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17038012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 聡 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10263063)
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Keywords | 超伝導 / 空間反転対称性 / 電子相関 |
Research Abstract |
空間反転対称性の破れた超伝導の研究 近年、空間反転対称性が結晶構造的に破れた超伝導体が幾つか発見され、その新奇な物性が注目されている。このような系ではスピン一重項ペアとスピン三重項ペアの混合や新しいタイプの電気磁気効果などが期待されている。我々は最近発見された重い電子系で空間反転対称性の破れた系CePt3Siに注目し、この系に固有の強い電子相関が空間反転対称性の破れに起因する効果にいかに影響を及ぼすかを理論的に調べた。特に超伝導状態での電気磁気効果の一つであるZeeman磁場によって誘起された超伝導電流(常磁性超伝導電流)を中心に研究を進めた。フェルミ液体論に基づく一般的な議論を用いて、この常磁性超伝導電流に対する形式的に厳密な表式を得た。その結果、この効果は電子相関の影響を受けにくいことが分かった。実際には磁場下ではマイスナー効果による反磁性超伝導電流も存在するが、この反磁性電流は電子相関の効果で抑制されることが知られている。すなわち、重い電子系のように著しく電子相関の強い系では、反磁性超伝導電流に対して相対的に常磁性超伝導電流が増強して観測にかかり易くなることが示された。また、このような常磁性超伝導電流を検出する実験についての提案を行った。さらにCePt3Siにおいて実現している超伝導状態について考察を進めた。 Izawa達によってなされた超伝導状態における熱伝導の測定から超伝導ギャップにラインノードが存在することが示されているが、他方、NMRの実験によると核磁気緩和率が超伝導転移温度直下で小さなコヒーレンスピークを示している点で、他のラインノードを有する重い電子系の超伝導とは異なっている。我々は理論的にこの小さなコヒーレンスピークの存在が、空間反転対称性の破れた系に特有の現象であることを示した。また、ラインノードの存在には、この系が反強磁性秩序と共存していることが本質的に関わっていることを指摘した。
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Research Products
(4 results)