2005 Fiscal Year Annual Research Report
多軌道モット転移近傍における異常量子効果の理論的研究
Project/Area Number |
17038018
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川上 則雄 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10169683)
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Keywords | 遷移金属酸化物 / 軌道ゆらぎ / フラストレーション / モット転移 / 異常伝導 |
Research Abstract |
本研究は、遷移金属酸化物の中で、軌道およびスピン自由度に起因する特異な性質に焦点をあて、これらの内部自由度が織り成す多様な現象を理論的に解明することを目的としている。本年度は、特に有限温度における多軌道のモット転移の理論を中心に研究を行った。 ○軌道選択型モット転移 軌道縮退をもつ遷移金属酸化物において「軌道に依存したモット転移」が興味を集めている。これに関連して、軌道縮退を持つハバード模型を用いて軌道ゆらぎに起因する重い電子の生成について調べた。その結果、軌道選択型のモット転移における中間相に軌道混成を導入することで、希土類化合物系と極めてよく似た機構によって、相関の強い重い電子状態が実現することを明らかにした。 また、軌道自由度に関連するテーマとして、軌道とスピン揺らぎの競合について調べた。このため動的平均場理論を用いて軌道縮退を持つ相関電子系の相図を有限温度で調べた。軌道の自由度の増加に伴い、軌道揺らぎとスピン揺らぎの競合が増幅され、その結果金属相が大きな相互作用まで安定化し絶縁相の出現が抑制されることが分かった。また、フント結合の強さを変えることで、スピンと軌道の競合を調節した。これにより絶縁相が安定化したり抑制されたりすることが明らかになった。 ○結晶格子による多バンド系 原子の軌道ではなく、結晶格子の構造により多バンドが形成されることがある。そのような多バンド系のモット転移を議論するため、その典型的として2次元カゴメ格子を調べた。この系は3バンドの相関系であるとともに、フラストレーションの強い電子系としても興味を集めている。動的クラスタ近似と変分モンテカルロ法を用いて、カゴメ格子におけるモット転移の研究を行った。その結果、金属・絶縁体転移近傍の金属相に強いフラストレーションを反映した異常な準粒子状態が出現することを明らかにした。
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Research Products
(4 results)