2006 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体の絶縁体-金属転移近傍における磁性と伝導の相関
Project/Area Number |
17038021
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
松田 雅昌 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部部門, 研究主幹 (90260190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇本 秀一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部部門, 研究員 (40399415)
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Keywords | 酸化物高温超電導体 / 中性子散乱 / スピン相関 / 磁気励起 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体の大きな特徴の一っとして、電気伝導と磁性が密接に相関していることが挙げられ、超伝導発現機構の解明にはこの関係を明らかにすることが不可欠である。最近の中性子散乱研究により、大局的な磁気励起スペクトルがYBa_2Cu_3O_<7-δ>系、La_<2-x>Sr_xCuO_4系ともにほぼ共通であり、砂時計型をしていることが示されている。これは銅酸化物高温超伝導体の磁性に普遍的なものであると考えられる。一方、絶縁体一超伝導体転移を起こす近傍(絶縁体で斜め非整合磁気相)における磁気励起の研究はほとんど行われていないのが現状である。以前行われたLa_<1.95>Sr_<0.05>CuO_4における高エネルギー励起の実験結果によると、約50meV以上ではスピン波励起で良く記述出来ることがわかっているが、低エネルギー領域での振る舞いははっきりしていない。一つの可能性は、斜め非整合磁気相を示すLa_<2-x>Sr_xNiO_4系で見られている通常のスピン波励起である。もう一つの可能性は、上に示した砂時計型磁気励起である。砂時計型磁気励起が超伝導相でのみ観測される特徴的なものかどうかを明らかにする上でも、斜め非整合磁気相における研究は重要である。 我々はLa_<1.96>Sr_<0.04>CuO_4単結晶を用いて中性子非弾性散乱実験を行い、0【less than or equal】ω【less than or equal】12meVおよび4【less than or equal】T【less than or equal】250Kの範囲で磁気励起を詳細に調べた。弾性散乱では、(π,π)付近の磁気ピークがb_<ortho>軸方向に二つに分かれて(1,±δ,0)_<ortho>にピークが観測されるが、励起エネルギー増加とともに次第に一つのピークに近づいていく(δが減少する)様子が観測された。この結果は、磁気励起が砂時計型である可能性を示唆している。つまり、砂時計型の磁気励起が伝導性によらず銅酸化物で共通であること(ニッケル酸化物とは質的に異なること)を意味しており、重要な発見である。
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Research Products
(2 results)