Research Abstract |
本研究においては、最近の赤外線観測結果から予想されている若い星のディスクにおける星間ダストの化学進化を実験的に再現し、主な化学反応の反応速度を決定し、さまざまなディスクにおけるダストの状態を予測することを目的としている.とりわけ,観測により宇宙空間のもつとも普遍的な存在形態と考えられている"astronomical silicate",すなわち非晶質珪酸塩を主とし,赤外輻射をにないうる輻射不透明物質(おそらく金属鉄および硫化物)をふくむ物質の形成条件,形成過程の解明をめざしている.初年度である本年は,出発物質の合成、加熱実験を計画した.主要な設備備品として,非平衡状態におけるガスの分子種を決定するため,四重極質量分析計を導入した. 実験は既存の装置を用い,金属鉄と珪酸塩を基盤とし,金属鉄を蒸発させFeガスを発生させ,同一条件における凝縮のしやすさ,凝縮する鉄の形態,サイズ,成長様式の違いなどをくらべた.その結果,両者には結晶成長速度の点で顕著な差があり,凝縮温度,ガスフラックスにかかわらず,鉄基盤上のほうが珪酸塩基盤絵宇にくらべ,凝縮鉄粒子サイズが大きいことが明らかとなった.これは核形成密度と表面拡散距離の差によるものと考えられ,金属基盤上では核形成密度が高く,表面拡散距離が比較的短いこと,一方珪酸塩基盤上では核形成密度が相対的に低く,それに対し拡散距離は比較的長いことによると考えられる.この結果を宇宙環境に拡張するなら,金属と珪酸塩がほぼ同程度の温度で凝縮する平均的宇宙環境(Mg/Si/Fe~1)では珪酸塩にとりこまれた鉄粒子は比較的容易にミクロンスケールの粒子となり効果的に輻射を担いうると考えられる.今後,珪酸塩ガスを珪酸塩・金属基盤に凝縮させ,今回の結果とあわせ,速度論的データを得る予定である.
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