2006 Fiscal Year Annual Research Report
若い星の周りにおけるダストの化学進化:実験によるアプローチ
Project/Area Number |
17039002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永原 裕子 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (80172550)
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Keywords | 若い星 / シリケイト / 非晶質 / ダスト / 化学進化 / 真空実験 / 凝縮 |
Research Abstract |
本研究においては、若い星のディスクにおける星間ダストの化学進化を実験的に再現し、主な化学反応の反応速度を決定し、さまざまなディスクにおけるダストの状態を予測することを目指した。赤外スペクトルの観測からは、星間ダストは非晶質珪酸塩中に金属あるいは硫化鉄粒子の散在素微粒子であると予測されるため、本年度は特に、珪酸塩物質と金属の濡れ性に着目し、凝縮実験を遂行した。様々な基盤に金属鉄の凝縮を行った結果、珪酸塩基盤と金属基盤に対する凝縮速度はほとんど差がないことが判明した。また、不均質核形成を起こす過飽和度を決定することに成功した。これは表面張力の差により、金属は珪酸塩には濡れないとする従来の考えと大きく異なる結果であった。その原因は、基盤となる珪酸塩の表面は、成長過程においてはミクロにはラフであり、原子レベルでは表面張力の差が問題ではなくなることを示している。この結果を敷衍すると、星周における凝縮においても先に珪酸塩あるいは酸化物が凝縮していれば、鉄は均質核形成せずに不均質核形成により、小さな過飽和度において凝縮が進行することを意味している。実験結果を用い、宇宙元素存在度のガスからの珪酸塩鉱物と金属の形成をモデル化した。境界条件として、珪酸塩が存在する場合は不均質核形成し、その過飽和度は実験による値とした。その結果、地上のような高圧でない限り、鉄は不均質核形成することが判明した。一方先に凝縮した珪酸塩(フォルスてらいと)は鉄に覆われるため、温度低下により、熱力学的にはガスと反応しエンスタタイトを形成すべき条件になっても反応が進行せず、大きな過飽和の末、SiO2を形成することが明らかとなった。これは、スペクトルのフィッティングにより星間ダストとして考えられている粒子の組み合わせとよく一致し、圧力、ガス冷却速度の推定が可能となった。
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