2005 Fiscal Year Annual Research Report
結晶質シリケイトの化学組成に依存する赤外線スペクトルの変化に関する研究
Project/Area Number |
17039006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
茅原 弘毅 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教務補佐員 (70379296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 千代枝 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (20097835)
土山 明 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90180017)
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Keywords | 赤外線天文学 / 宇宙鉱物学 / 星周塵 / 結晶質シリケイト / 赤外線分光 / オリビン |
Research Abstract |
太陽系外の原始惑星系円盤をはじめとする恒星周囲における固体物質の形成や進化の過程を議論するためには、天体観測を正しく解釈するための実験室分光データが必須である。本研究では赤外線天文学において注目される恒星周囲の固体物質(星周塵)に関する赤外線分光実験を行った。結晶質星周塵の主要な構成鉱物と考えられ、地球上の主要な造岩鉱物でもあるシリケイト鉱物は、一般に、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等を各々の端成分とする固溶体を形成し、化学組成に依存する赤外線吸収スペクトルの変化に興味が持たれる。また、多くの結晶質シリケイトでは、固溶体の端成分において鋭い吸収ピークが遠赤外線領域に現れ、鉱物固有の特徴を示す。これらの遠赤外線吸収ピークは一般に化学組成に対して非常に敏感であり、端成分に近い組成領域で常に大きな挙動の変化を示すことから、星周における結晶質ダストの組成や結晶構造を決定するための有力な指標となることが示唆される。一方、観測研究においては結晶質シリケイトのピーク位置や半値幅からダストの化学組成や温度を推定しようとする動きがあるが、それらを正確に決めることは、実験データの不足から今のところ困難である。したがって、より精密な化学組成と温度に関するピーク挙動の依存性を実験室で調べる必要がある。本年度における本研究では、メリライト、斜長石、およびオリビン等について、結晶試料を合成または収集し、それらの吸収スペクトルの化学組成依存性を測定した。その結果、吸収ピークの数や強度において系統的な変化が明らかとなり、特に鉱物中の重たい元素が多くなるほど、吸収ピークの位置が長波長へずれていくことや、ピークの半値幅が大きくなっていくことなどがわかった。吸収ピークの位置や半値幅は星周塵の種類を同定する場合に非常に重要である。さらに吸収スペクトルの詳細な組成依存性と、今後行う温度依存性の実験結果とを組み合わせることで、吸収ピークのパラメータ間の相関から、星周塵および星周の物理化学環境にさらに制限を加えられる可能性があることが示唆されるという結果を得た。
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Research Products
(2 results)