2005 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトマテリアルを用いた自律応答型アクチュエーターの開発
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17040019
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹岡 敬和 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (20303084)
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Keywords | ソフトマテリアル / BZ反応 / 蠕動運動 |
Research Abstract |
我々は、ポーラスなゲル膜内で生じる非線形化学反応を、色の変化によって観測することに成功している。非線形化学反応としては、金属錯体を触媒に時空間的なパターンを生じるBZ反応が最も認知されている。硫酸や硝酸を含む強酸水溶液中で、マロン酸やクエン酸などの有機酸を還元剤とし、臭素酸塩を酸化剤とした酸化還元反応が、ルテニウムなどの金属錯体を触媒としてゆっくりと周期的に進行する反応である。BZ反応の触媒であるルテニウム錯体をポーラスゲルに化学的に組み込むと、BZ反応の進行に伴うルテニウム錯体の周期的な酸化還元反応によってゲルの体積も周期的な変化を示すようになる。膜状のゲルを使用する場合、その膜厚がBZ反応の化学波の周期よりも小さければ、波は膜面に平行な方向にのみ移動する。その結果、ゲルは、ミミズの動きのような蠕動運動を起こすようになる。このような状態にあるとき、ゲルのある箇所におけるλ_<max>の時間変化を測定すると、蠕動運動の周期や振幅を定量的に見積もることが可能となる。図1aに、ルテニウム錯体を組み込んだポーラスなNIPA共重合ゲルのBZ反応溶液中、19℃にて観測された反射スペクトルの時間変化の結果を示す。BZ反応の進行に伴って、λ_<max>の位置が振動していることがわかる。また、観測温度を変えると、その振幅や周期の変化が観測された。λ_<max>の時間変化から、式を利用して、ゲルの膨潤度の時間変化を見積もることができるので、ゲルの蠕動運動の様子の定量的な解析が可能になる。例えば、膜厚を0.5mmで調製したポーラスゲルが蠕動運動によって膨潤度が変化しているのであれば、調製時の膜厚と膨潤度から各状態でのゲルの膜厚が算出される。このゲルが、4℃、12℃、19℃において、BZ反応に連動して蠕動運動している場合、ゲルに生じる波の高低差(i-i_o)は、それぞれ、3.1μm、5.6μm、9.9μmとなる。つまり、BZ反応のような時空間パターンを形成する非線形化学反応に連動したゲルの膨潤度変化の様子を色の変化として定量的に観測できたということである。
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