2005 Fiscal Year Annual Research Report
希土類と白金族元素を秩序化させたペロブスカイトのデザインとf-d電子の示す磁性
Project/Area Number |
17042003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日夏 幸雄 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70271707)
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Keywords | ペロブスカイト / 酸化物 / 希土類 / ルテニウム / 磁化率 / 比熱 / アルカリ土類金属 / 反強磁性 |
Research Abstract |
ペロブスカイト型酸化物ABO_3で希土類を物性の表舞台に立たせるため、サイズの大きく異なる白金族元素と組み合わせることで、Bサイトに入る元素がNaCl型に規則配列した"ダブルペロブスカイト"A_2BB'O_6構造をとることを見い出した。希土類(4f電子系)とルテニウム(4d電子系)やイリジウム(5d電子系)が構造的に秩序化したことにより、f-d電子の相互作用に起因する特異な物性を発現させることができた。 A_2LnRuO_6(A=Sr,Ba)ではLnとRuが規則配列するが、イオンサイズがLnに近いA=Caになると、サイト置換(Ca【tautomer】Ln)と、それによるf-d電子間相互作用経路の変化が起きると期待される。Lnサイズが大きくなると、Caと置換してAサイトを占めるようになり、LnイオンのAサイト占有率は、そのLnイオン半径に依存することがわかった。 いずれのCa_2LnRuO_6化合物においても反強磁性転移が観測され、その転移温度は10〜18Kであるが、Ln=Ybでは最も高く34Kであった。Ca_2YbRuO_6の磁化率、比熱測定からBサイトにあるYb^<3+>とRu^<5+>の磁気モーメントは共にこの温度で反強磁性転移を示したことがわかり、高い磁気転移温度はこのことによると考えられる。一方、希土類がAサイトに入ったNd化合物(CaNd[CaRu]O_6)では2段階で反強磁性転移が起こる。すなわち11.5KではRu^<5+>の磁気モーメントのみが磁気秩序し、さらに温度が下がり、1.6Kになって初めてNd^<3+>の磁気モーメントは秩序化することがわかった。 全てのA_2LnRuO_6(A=Ca,Sr,Ba)で反強磁性転移が見られた。同じ希土類を含む化合物では、その磁気転移温度に明瞭な傾向T_N(A=Ba)>T_N(Sr)>T_N(Ca)つまり、Aサイトに位置するアルカリ土類金属のイオンサイズが小さくなるにつれ、転移温度が減少することが見られた。これはBa_2LnRuO_6ではLn-O-Ruがほぼ直線状に並んでいるが、AサイトがBaからSr,Caに変わると、Ln-O-Ruの並びが180°から大きく逸脱するため、酸素原子を介するf-d電子間の磁気的相互作用が弱くなることを反映したと考えられる。
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