2005 Fiscal Year Annual Research Report
希土類錯体を用いた無機-有機ナノコンポジットの水熱合成
Project/Area Number |
17042012
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
佐藤 峰夫 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30149984)
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Keywords | 希土類錯体 / 無機-有機複合体 / dipic / 水素結合ネットワーク / ポリオキソメタレート / 水熱合成 |
Research Abstract |
特異な性質を有する希土類系物質は、これまで無機化合物あるいは希土類錯体など、それぞれが単独の物質形態で利用されることが多かった。本研究ではこれら2つの物質系が自己組織的に集合した新しい希土類含有無機-有機複合体の合成を試みた。 今年度において種々の検討を行い、(1)[Na(C_<10>H_8N_2-H)_3(C_<10>H_8N_2)_2][Mo_8O_<26>]4H_2Oと(2)NaEu(C_7H_3NO_4)_27H_2Oの2種類の新規複合体を合成することができた。 (1)の化合物では、[Mo_8O_<26>]^<4->アニオンの周りを一部プロトン化したビピリジニウムイオン[4,4'-bpyH]^+のカチオンが取り囲んでいる。ビピリジニウムイオン同士は水分子を介して強固な水素結合ネットワークを形成している。[Mo_8O_<26>]^<4->アニオンには様々な異性体があるが,今回合成したものはβ型と呼ばれるもので,多面体サブユニットとして8つの八面体を有しそれぞれが稜共有している。また、このアニオン同士は間にNaイオンを介して連結して、c軸に伸びる無機骨格の一次元鎖を形成しているのが特徴である。 (2)については、Euとの安定な錯形成を考えてアセチルアセトナート系とカルボキシレート系の配位子を検討したところ、2,6-pyridinedicarboxylate(dipic)を配位子とした場合に表記の新規化合物を得ることができた。Euは3配座のdipicが2つと3つの水分子による9配位、Naはdipicのカルボキシレートの酸素原子2つと4つの水分子による6配位をとっている。この化合物は一見単純な錯体のように見えるが、特徴的な二次元構造を有することがわかった。Fig.4に見られるように、NaとEuとが酸素原子で連結した(無機骨格?)二次元ネットワークを形成し(Fig.5)、この面からEuに配位子たdipicのビピリジン環が層間に突き出ている。層間には水分子が存在しており、この水分子間に強い水素結合ネットワークを形成し、構造を安定化している。この化合物は非常に強い赤の発光を示し、Eu^<3+>として存在していることがわかる。また、その励起スペクトルから、この強い発光は主にdipicのピリジン環からのエネルギー移動による発光と考えられる。 本研究において、2種類の新規な無機-有機複合体の合成に成功した。しかし、当初計画していた希土類含有無機-有機複合体の合成は困難であったが、化合物(2)はNaとEuとの2次元無機骨格層を有していることなど、無機-有機複合体の構造的な特徴を備えているなど、興味深い化合物であるといえる。
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