2005 Fiscal Year Annual Research Report
高内皮細静脈特異的な細胞動員シグナルによるリンパ球ホーミング制御と免疫監視の強化
Project/Area Number |
17047025
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 稔之 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (30217054)
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Keywords | 高内皮細静脈 / リンパ球ホーミング / ケモカイン / ケモカイン結合分子 / 細胞外基質 / 細胞接着 / 細胞遊走 / autotaxin / lysophospholipase D |
Research Abstract |
【目的】リンパ節高内皮細静脈(HEV)はリンパ球ホーミングの制御を通じて免疫監視の場の形成に必須の役割を担う。本年度は、HEVによる特異的なリンパ球動員シグナルの形成とその制御機構について解析を進め、以下の成果を得た。【結果と考察】1.HEVをとりまく細胞外基質蛋白質によるケモカイン結合とその提示:私たちは、HEVとその近傍に分布する細胞外基質蛋白質が可溶性低分子量蛋白質であるケモカインを結合し、その空間配置と活性の制御に関与することを見出した。HEVが発達した基底膜を持つことに注目し、基底膜を形成する細胞外基質蛋白質であるcollagen IVとケモカインの結合特異性を解析した。その結果、collagen IVはCCL21, CXCL12およびCXCL13を結合するがCCL5, CCL19やC末端の塩基性アミノ酸クラスターを欠失する変異CCL21を結合しないことが示された。表面プラズモン共鳴法を用いた解析から、collagen IVとこれらケモカインの結合は数nMから数十nM程度の解離定数をもつことが示唆された。また、免疫組織学的な解析からHEV基底膜およびHEV近傍で、collagen IVとCCL21およびCXCL13が共局在することが示された。これらの結果から、collagen IVがHEV近傍でケモカイン提示分子として機能し、リンパ球の血管外遊走やHEV近傍のリンパ球遊走路の形成に重要な役割を担うことが示唆された。2.HEVにおける生理活性脂質産生の鍵酵素autotaxin/lysophospholipase D(ATX)の発現とその制御:細胞の接着や遊走を制御する生理活性脂質(LPAおよびS1P)産生の鍵酵素ATXは、リンパ節・パイエル板においてHEVに選択的に発現する。またATXの発現は加齢AKRマウス胸腺やNODマウス膵臓などの慢性炎症部位の血管に選択的に誘導されることから、これら炎症組織へのリンパ球浸潤にもATXが関与することが示唆された。さらに特異抗体をマウスへ投与することによりATX活性をin vivoで阻害できることが示された。
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