Research Abstract |
樹状細胞は,抗原提示細胞,免疫制御細胞として免疫学的恒常性の維持に関与している.申請者らは,樹状細胞が骨髄系,リンパ球系の両前駆細胞から分化できることを報告してきた(Science 290;2152,2000;Immunity 21;43,2004).樹状細胞が発生学上2つの系統別亜集団に分類されることは,各々の集団が機能上の差異を有し,種々の免疫応答において異なった役割を果たしている可能性を示唆している.そこで発生過程において,リンパ球系由来の樹状細胞を識別可能な色素でラベルするために,RAG1-Creノックインマウスを用いた解析を行った.RAG1-CreマウスにEYFP-ROSA26マウスを掛け合わせた.このレポーターマウスでは,Creリコンビナーゼの発現が誘導されると,IoxP配列間に組み込まれたstopコドンが除去され,その下流に配したEYFPが発現する.その結果,リンパ球系前駆細胞由来の樹状細胞を含むリンパ球系の細胞はすべてEYFPを永続的に発現する.このマウスシステムを用いてEYFPの黄色蛍光をマーカーとしてリンパ組織中の樹状細胞を観察したところ,1)脾臓,胸腺,リンパ節の樹状細胞はいずれも約5-10%のみEYFP陽性,2)リンパ球系共通前駆細胞(common lymphoid progenitors : CLP)の約半数がEYFP陽性,3)さらにEYFP陰性のCLPを純化し移植したところ,すべてのEYFP陰性CLP由来の樹状細胞は生体内でEYFP陽性となった.したがってこの系においては,すべてのリンパ球系由来の樹状細胞がEYFPでラベルされていると考えられた.以上から,予想に反しリンパ球系由来の樹状細胞は骨髄系由来のそれと比して非常に小さな集団であることが明らかになった.このマウスからEYFP陽性樹状細胞とEFP陰性樹状細胞を純化し,その遺伝子発現の差異をマイクロアレイ法で検索中である.
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