2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト記憶型T細胞のレパートリーが免疫監視機能とその維持に与える影響
Project/Area Number |
17047034
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
上野 貴将 熊本大学, エイズ学研究センター, 講師 (10322314)
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Keywords | 細胞障害性T細胞 / T細胞レセプター / 抗原提示 / 免疫監視 / HIV / エスケープ |
Research Abstract |
本研究では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)など変異性の高い病原体に対するヒトCD8^+細胞傷害性T細胞(CTL)の応答をモデルとして、メモリーT細胞のレパートリーが新たな抗原に接したときのヒト免疫監視機能に与える影響を解明することを目的としている。本年度は、HIV-1がCTLエスケープ変異を起こしたあとのCTL応答に着目して、HIV-1特異的CTL機能の広範な解析を多くの慢性HIV-1感染者について実施した。その結果、HIV-1の変異に呼応して、変異型のエピトープのみに特異的でT細胞レパートリーの異なる新たなCTLサブセットが惹起されていた。これらのCTLは、抗原刺激に対してインターフェロンガンマなどの抗ウイルス性サイトカインを産生したが、増殖応答は示さなかった。野生型エピトープに特異的なCTLはどちらの機能も正常であった。生体内CTLの経時的から、この機能不全型CTLが増えるとともに、機能型サブセットは減少していくことがわかった。これらの結果から、慢性HIV感染症で知られているCTL機能の低下は、変異抗原によって新たに誘導されたCTLの機能不全によるものと示唆された。以上のことから、CTLエスケープ変異は単に既存のCTLから逃避するのみならず、低機能の新たなCTLサブセットを増やすことによって、これまで考えられていたよりもより積極的にエイズ病態の進行に関わることが明らかとなった。慢性ウイルス感染においても、メモリー型T細胞による免疫監視機能が、病態制御に重要であることがわかった。
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