2005 Fiscal Year Annual Research Report
血管平滑筋細胞の遊走につながるシグナル伝達経路の解明
Project/Area Number |
17049001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
熊谷 啓之 東北大学, 先進医工学研究機構, 助教授 (20321945)
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Keywords | 動脈壁硬化 / 骨化シグナル / 核内移行 |
Research Abstract |
動脈硬化病変に起因する疾患を一括りにすると、わが国の死因の圧倒的首位を占める。この病変では血管閉塞もさることながら、血管壁の硬化が、収縮期血圧上昇や血管壁破綻を招き、動脈硬化性疾患発症の大きな要因となっている。そこで申請者は、動脈壁硬化の分子機序を解明することにより、その予防・治療法開発の基盤を築くべく研究を開始した。血管壁の石灰化は単なる物理的カルシウム沈着ではなく、血管平滑筋細胞の骨芽細胞への分化による。in vitroでは、骨形成因子(BMP)がこの役割を担っていることがわかっており、実際に動脈硬化病巣では、BMPシグナル伝達が亢進していることを申請者は発見した。具体的には、BMPシグナル伝達分子のうち骨化を担うものの一つにシグナル依存性に核内移行するものがあるのだが(知財の観点から、詳細の記述は差し控えさせていただく)、この蛋白は病変部位では核内に局在しているのに対し、正常部位では細胞質に留まっていることがわかった。さらにこの蛋白を強制発現させた際も、病変部位由来の培養平滑筋細胞では核移行してしまっているのに対し、正常部位由来の細胞では細胞質に留まっている。この実験事実は、シグナル伝達分子を細胞質にsequesterする蛋白の存在を示唆する。そこで申請者は、このシグナル伝達分子をbaitにした酵母Two-Hybridスクリーニング法、及び申請者が開発した特殊選別方法により、大動脈cDNAライブラリーの中から、そのような新規蛋白をクローニングすることに成功した。次年度は、この蛋白のin vivoにおける血管壁石灰化への関与の証明、及び、この蛋白のcDNAを用いた、血管壁硬化の進展防止を目的とする遺伝子治療法の開発に着手していこうと思う。
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