Research Abstract |
従来,蛋白質分解の研究は細胞の集団から蛋白質を抽出して免疫ブロット法等の解析を行うしか方法がなく,われわれも同様の方法により転写因子GATA2発現の細胞周期特異的な分解を見いだし報告した.しかし,このような解析には細胞周期を同調させた細胞集団が必要であり,多様な増殖特性を持つ細胞を持ち,細胞周期の同調が困難な正常組織の細胞を用いた解析は不可能であった.一方,免疫組織化学的方法においては,個々の細胞における発現を捉えられるものの,定量的解析が困難であった.そこで,我々は,転写因子等の核内因子と,細胞表面抗原,DNAの多重蛍光染色を行い,フローサイトメーターを用いて解析する方法を検討した.この方法では,性質の異なる細胞集団ごとにゲートをかけた解析が可能であり,また,個々の細胞の持つDNA量と転写因子発現の関係を2次元の図として解析することができる.我々は,造血幹細胞を含む細胞分画の解析を行い,GATA2発現はS期からG2期にかけて高く,M期に低下することを明らかにした.M期には細胞周期を進行させるサイクリン等の分解も起きるが,GATA2とサイクリンとDNAの3重染色の結果から,GATA2の分解はサイクリンBの分解より早い段階に起きることを見いだした.このような蛋白質分解制御はGATA2に特異的であり,類似のDNA結合特性を持つGATA1においては認められなかった.さらに,我々は緑色蛍光蛋白質とGATA2およびその変異体との融合蛋白質のフローサイトメーター解析を行い,サイクリン/Cdk複合体による複数のセリン/スレオニン残基のリン酸化がGATA2の細胞周期特異的分解を制御していることを明らかにした.
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