2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞質分裂における収縮環構造とその構成成分のターンオーバの関係
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17049005
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中野 賢太郎 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (50302815)
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Keywords | 分裂酵母 / 細胞質分裂 / 細胞骨格 / アクチン / ミオシン / 形態形成 / 収縮環 / 細胞極性 |
Research Abstract |
細胞分裂は、2つに分裂した娘細胞に遺伝情報である染色体を分配する核分裂と、オルガネラを含めた細胞質を分配するための細胞質分裂からなる。これらは根源的な生命現象であると同時に、医学的にもその分子機構の理解が重要である。特に細胞質分裂に失敗すると、核分裂により分配された染色体が再会合することで異性体を生じ、ガン化のリスクが高まる。細胞質分裂は、分裂面に一過的に形成されるアクチン繊維とII型ミオシンを主成分とする収縮環を基盤とする分子装置により引き起こされる。従来は、細胞膜をくびりきるために必要な収縮環の収縮力は、アクトミオシンの相互作用による点で筋収縮と同様であると考えられてきた。ところが最近、収縮環においてアクチンとミオシンは非常に早いターンオーバー速度をもつことが明らかにされた。このことは、収縮環の構造が、筋肉を構成するサルコメアとは大きく異なることを示唆する。従って、収縮環の全構成成分を明らかにし、各分子の機能と動態を収縮環のダイナミクスと結びつけて理解することが不可欠であると考えられた。分裂酵母は、収縮環による細胞質分裂の分子機構が最も良く解明されているモデル生物である。そこで私は、分裂酵母からアクチンのダイナミクスを誘導・制御する因子として、Adf1を単離し、機能解析を行った。一連の解析結果から、Adf1は分裂酵母の細胞内におけるアクチンの脱重合を促進するほぼ唯一の因子であることを示した。つまり、Adf1の機能の失活によりアクチンのターンオーバーは停止する。この際、収縮環構造は急激に崩壊した。一方、Adf1にはアクチン繊維を切断する働きもある。Adf1のアクチン脱重合と切断の活性について変異遺伝子を利用することで分離し、収縮環構造への影響を調べた。その結果、切断活性も収縮環構造の維持に不可欠であることが示唆された。興味深いことに、この切断活性はミオシンの機能と密接に関連していることが判明した。もしかしたら、収縮環においてミオシンが効率的にアクチンと相互作用するためには、アクチン繊維の本数や長さが適度に制御されることが重要なのかもしれない。次に、Adf1と機能関連をもつ因子について解析した。その一つであるAcp1/Acp2複合体は、アクチンの繊維端に結合することにより、細胞内のアクチン重合を阻害した。この活性は、Adf1により切断されたアクチン繊維の再重合化を抑制するのに関与していた。また、Aip1もAcp1/Acp2複合体と類似の機能を担うことが示唆された。しかし、Aip1は、Acp1/Acp2複合体とは異なり、収縮環特異的なアクチン繊維の切断に関与している可能性が考えられた。また、Adf1により脱重合されたアクチンを再重合させる経路についても解析を行った。この経路に関わるCap1は、細胞増殖に必須ではない。しかし、cap1遺伝子破壊細胞の収縮環の形状は大変に異常であった。以上の分子について、さらに詳細な機能解析を行うことで、収縮環のダイナミクスの制御機構が明らかになると期待できる。
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Research Products
(4 results)