2005 Fiscal Year Annual Research Report
クロモキネシンKidによる分裂後期の染色体動態と娘細胞核形成の制御機構
Project/Area Number |
17050006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大杉 美穂 東京大学, 医科学研究所, 助手 (00332586)
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Keywords | 細胞生物学 / 分裂期 / 核膜 / キネシンモーター分子 / 染色体分配 / ノックアウトマウス / Kid |
Research Abstract |
クロモキネシンKidは染色体腕の中期板整列を担うモーター分子である。我々はRNAiによる発現抑制の結果などから、Kidが紡錘体形成や分裂後期にも染色体整列とは独立の働きを担っていることを見いだした。本研究では、分裂後期から核形成時におけるKidの機能解析を通し、分裂後期染色体を一団にまとめるための機構と、それが正常な娘細胞核形成においてどのような意義を持つかを解明することを目的としている。本年度は以下の3つの解析を中心に行い結果を得た。 1.蛍光免疫染色及び免疫電顕観察の結果、分裂後期のKidは主に隣り合う染色体同士の間隙に存在した。核膜再形成時期の隣接する染色体同士は本来ほとんど隙間なく接着し一塊化するが、Kid発現抑制HeLa細胞ではそのような一体化の効率が悪く、染色体間に隙間が残ったまま分裂終期に入った。その結果、核ラミナが娘細胞に分配された一塊化した染色体群ではなく、個々の染色体を包むように形成され、娘細胞核形態異常が高頻度に引き起こされた。これらの結果から、Kidは分裂後期に分配中の染色体同士をつなぎ正常な娘細胞核形成を保証する働きを担っていることが示唆された。2.Kid結合分子として核膜輸送タンパク質を同定していたが、実際Kidには2カ所の機能的な核移行シグナルが存在し、核膜輸送タンパク質との結合領域となっていることを見いだした。両者の結合が間期におけるKidの核内局在にだけではなく、分裂期におけるKidの染色体局在をも制御することを示唆する結果を得た。3.Kid欠損マウスの解析を開始し、Kid-/-胚の約半数が発生初期の分裂期異常により死亡することを見いだした。しかし予想に反し、残り半数の胚は外見上正常に発生、生誕、生育し生殖能力もあった。今後、Kid-/-マウスの長期的な観察を含め、分裂を繰り返す組織、細胞群についての解析を行うことにより、Kid欠損により生じる核形成異常が個体に与える影響の解析をすすめる。
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Research Products
(2 results)