2006 Fiscal Year Annual Research Report
分裂期染色体の構造解析(クロマチンイメージング)に基づく核ゲノム機能の解明
Project/Area Number |
17050026
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
前島 一博 独立行政法人理化学研究所, 今本細胞核機能研究室, 研究員 (00392118)
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Keywords | 染色体 / クロマチン / 構造 / ヒトゲノム |
Research Abstract |
直径2nm、全長2mにも及ぶヒトゲノムDNAは、まずピストンに巻かれ、ヌクレオソームになり、さらに折り畳まれて直径約30nmのクロマチン繊維を形成するとされている。しかしながら、このクロマチン繊維がどのようにして、最終的に直径約0.7〓mの分裂期染色体を作るのかについては全くの謎であり、長年に渡って生物学者たちの興味を集めてきた。古くから提唱されているモデルでは、「30nmのクロマチン繊維が、100nm、200nmと、らせん状の階層構造を形成している」と予想されている。研究代表者らは染色体の構造理解を目的として研究を進め、主に電子顕微鏡をもちいて解析をおこなってきた。しかしながら本解析によって、染色体構造、とりわけ染色体軸が存在する中心部は予想以上に「複雑」であることが判明した。さらに、顕微鏡観察は試料中における観察範囲が限定され、内在する規則性構造の全体像を捉えることが非常に困難である。このため、研究代表者らはX線小角散乱解析(SAXS)をおこなうことにした。X線小角散乱は、計測したい非結晶試料にX線を照射し、その散乱パターンからその試料に内在する構造や規則性を知る手段である。したがって染色体中の規則性構造の検出に非常に適していると考えられる。 研究代表者らはこれまでSPring-8の理研SAXSビームラインであるBL45XUを用いて、単離した染色体と細胞核のX線小角散乱の予備的な測定を繰り返し、染色体中に6nm,12nm,30nmの散乱のピークを検出している。これらはそれぞれ、コアヒストンの幅、ヌクレオソームの直径、30nm繊維に相当すると考えられる。現在まで、30nm散乱のピーク以上の大きな構造は検出されていない。このことは、古くから提唱されているモデルが必ずしも正しくない可能性を示唆している。さらに、散乱パターンを解析すると30nm以上の範囲では、クロマチン繊維がランダムに折り畳まれていることを示唆している。このことは共同研究としておこなっているクライオ電子顕微鏡をもちいた染色体観察とも一致している。
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