2005 Fiscal Year Annual Research Report
ポストゲノム解析によるオルガネラ分裂・分化の統御機械の解明
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17051029
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
黒岩 常祥 立教大学, 理学部, 教授 (50033353)
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Keywords | オルガネラの分裂 / ミトコンドリア分裂・分化 / 色素体分裂・分化 / 細胞質遺伝 / FtaZリング / MDリング / PDリング / ダイナミン |
Research Abstract |
細胞核はオルガネラ(ミトコンドリアと色素体)の分裂・分化を同じような機構で制御しているのか、あるいは異なった方法で制御しているのかを明らかにするために、シゾン(Cyanidioschyzon merolae)を主な材料として研究を進めた。オルガネラの分裂・分化に関わる細胞質遺伝の過程はA)性を伴う有性細胞質遺伝とB)性を伴わない無性細胞質遺伝、即ちオルガネラの分裂分配がある。Aに関しては、分裂を繰り返し増殖していたオルガネラが有性生殖過程に入ると、増殖を止め、形を変形させ、所謂、分化する。クラミドモナスの色素体の場合には、受精すると交配型+の遺伝子は残り、交配型-の遺伝子は一連の生化学的機構(能動的消化機構)により分解した。この片親遺伝に関る遺伝様式は高等植物動物にまで維持されていた。しかしながら色素体とミトコンドリアでは逆であった。つまりミトコンドリアも色素体もオルガネラDNAの選択的消化は類似のシステムで進行するが、配偶子形成過程のどこかにスイッチがあり、進行を逆の性に入れ替える機構があることが判明した。Bに関しては、これまでの研究により、ミトコンドリアと色素体の分裂は類似のダイナミックトリオ(FtsZ、PD/MD、ダイナミンリングの3リング)を使っておこることが明らかとなっている。しかしながら、シゾンを細胞核のDNA合成阻害剤(カンプトテシリン、5FU)で処理すると、細胞核、ミトコンドリアの分裂は阻害され、色素体の分裂は進行した。その結果、細胞内には細胞核とミトコンドリアは各1個そして色素体は10個以上となった。ミトコンドリアには大きなMDリングが1個、色素体にはそれぞれの分裂に関わる小PDリングが1個であった。ミトコンドリアの分裂にも色素体の分裂にもダイナミックトリオが関与しているのに何故、ミトコンドリアでは分裂が進まないのであろうか。そこで、更に詳しく解析した結果、色素体のダイナミンは色素体の分裂面に移動するが、ミトコンドリアのダイナミンは移動せず細胞質に存在することが明らかとなった。つまり細胞核はダイナミンの移動と機能をミトコンドリアの分裂と色素体の分裂で使い分けていた。ダイナミンの機能に関しては、PDリング複合体を単離してTOF-MS解析した結果、PDリング複合体を構成するタンパク質とそれらの機能の全貌を明らかにすることができた。この方法はミトコンドリアの分裂装置にも適応できることが分かった。
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