2006 Fiscal Year Annual Research Report
塩ストレス適応戦略としてのナトリウムおよび適合溶質のオルガネラ間輸送システム
Project/Area Number |
17051030
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
高倍 昭洋 名城大学, 総合研究所, 教授 (80097766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 義人 名城大学, 理工学部, 助教授 (10247679)
日比野 隆 名城大学, 理工学部, 助教授 (70218741)
中村 辰之介 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (20114308)
藤分 秀司 島津製作所, 分析計測事業部ジェノミックリサーチ室, 室長 (50395696)
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Keywords | オルガネラ / ベタイン / ナトリウム / 塩ストレス / 植物 |
Research Abstract |
本研究は、塩ストレスにともなうナトリウムイオンの輸送、およびグリシンベタイン(ベタイン)などの適合溶質のオルガネラ間輸送に関与する遺伝子産物の役割をオルガネラ分化の視点で明らかにすることを目的とする。具体的には、シュガービートなどのベタインを蓄積するものと、アラビドプスを用いて解析を進める。ナトリウムイオンの輸送に関する研究---植物の細胞内Na^+濃度の調節の基本は過剰なNa^+の細胞外への排出および液泡への蓄積である。動物、酵母、バクテリアとは異なり、植物の場合、Na^+/H^+アンチポーターがこれに関与する。植物のNa^+/H^+アンチポーターは、NhaP (CPAl型、細胞質膜に局在するSOS1および液泡膜のNHX1が属する)、NapA (CPA2型)、NhaD型が存在すると予想されている。そこで、機能のわからないNhaP、NapA、NhaD型アンチポーターについて検討した。N耐塩性ラン藻がもつ2個のNapAlアンチポーターはアルカリ性で活性が高く、1つはNa^+/H^+アンチポーター、もう一つはNa^+/(H^+,K^+)アンチポーターとしてはたらくことが明らかになった。NhaP1アンチポーターに存在する親水性のC末端部分がNa^+に対する親和性やアンチポーター活性のpH依存性に関与することを明らかにした。一方、アラビドプシスのNhaDアンチポーターについても検討した。その結果、NhaDの輸送するイオン、局在性は複雑である。plasma membrane protein 3(PMP3)が塩ストレスにより誘導されて、過剰な塩(Na^+あるいはK^+)によるNa^+あるいはK^+の細胞内への蓄積を抑制する作用があることをPMP3遺伝子の過剰発現およびノックアウト体を用いて明らかにした。カリウムイオンは細胞内に大量に存在し細胞の活性を阻害しないことから、浸透圧適合溶質としても働くと考えられていた。これまで、濃度勾配にしたがってK^+を細胞内へ排出するトランスポーターは知られていなかった。今回、K^+が細胞外に多量(過剰)に存在するストレス条件下で、VibrioのNhaP2アンチポーターが濃度勾配にしたがってK^+を細胞内へ排出することを見い出した。これまで、大腸菌のNa^+/H^+アンチポーターとして、NhaA、NhaB、ChaAが知られていたが、ChaAがK^+/H^+アンチポーターとして過剰なK^+を細胞外に排出する機能を果たしていることを明らかにした。ベタインの合成・輸送に関する研究---植物、動物、バクテリアのベタインは、コリンの2段階の酸化により合成されることが知られている。私達はある種の耐塩性ラン藻はグリシンの3段階のメチル化によりベタインを合成していることを見い出した。これに関与する2個の遺伝子を淡水性ラン藻に導入すると淡水性ラン藻が海水で生育すること、また植物に導入すると多くのベタインを蓄積し植物の塩ストレス耐性が向上することが明らかになった。耐塩性ラン藻からベタイントランスポーター遺伝子を単離し、マングローブのベタイントランスポーターと比較検討した。シュガービートの形質転換系が確立できたので、コリンモノオキシゲナーゼ、ベタイントランスポーター遺伝子の単離を進めている。
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Research Products
(6 results)