2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17052001
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小川 園子 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (50396610)
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Keywords | 性分化 / アロマテース / 活動性 / 情動性 / 不安関連行動 / 社会的探索行動 / 分離ストレス |
Research Abstract |
(1)アロマテース遺伝子欠損マウスの情動行動特性の解析:周生期におけるエストロゲン刺激の有無は脳機能や行動形質の性分化に重要な役割を果たしている。本実験では、脳内テストステロンのエストラジオールへの代謝を促す酵素であるアロマテースの遺伝子欠損(ArKO)マウスを用いて、エストロゲン刺激の欠如が個体の情動性、不安レベルや、同種他個体という社会的な刺激への反応性に及ぼす影響を検討した。ArKOやヘテロ(ArHZ)の雄マウスは、野生型(ArWT)の雄マウスにくらべて、オープンフィールド(OF)テストでの移動活動量の頻度が高く脱糞数が低下しており、全体として雌タイプの行動様式を示した。また、社会的探索行動(SI)テストでも、ArWTマウスは、攻撃行動の対象となり得る刺激雄マウスに対してテリトリー防衛的な探索行動を示すが、ArKOやArHZマウスはむしろ攻撃行動の対象となり得ない性腺除去雄マウスへの接近を好むことが明らかとなった。従って、周生期におけるエストロゲン刺激の欠如や低下によって、OF行動や社会的刺激に対する反応性が雄タイプから雌タイプに移行したと結論された。 (2)新生仔期母親分離による情動行動発現の変容:発達初期における母親からの分離ストレス(生後1〜14日目に毎日3時間)が後の行動様式に及ぼす影響を雌雄のC57BL/6Jマウスを用いて検討した。生後13週目より行なったOF、明暗箱往来、高架式十字迷路テストでは、活動性、情動性、不安関連行動などにおいて、雌雄共に、分離ストレスの効果は認められなかった。一方、同性の新奇マウスに対する探索行動を測定したSIテストでは、分離経験により社会的不安のレベルが雌マウスにおいてのみコントロール群とくらべて著しく増大していることが見い出された。従って、新生仔期での母親からの分離経験は、主に社会的刺激に対する行動様式に性特異的に影響すると結論された。
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