2005 Fiscal Year Annual Research Report
性行動と母性行動の発達における神経伝達物質、GABAの役割
Project/Area Number |
17052002
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
柳川 右千夫 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90202366)
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Keywords | 性行動 / 母性行動 / GABA / トランスポーター / 誘導型ノックアウトマウス / テトラサイクリン / 口蓋裂 |
Research Abstract |
神経伝達物質GABAは、脳の性分化において重要な役割を果たしている。ラット新生児にGABA受容体アゴニストのムシモールを投与すると、雄では成育後に性行動の低下と血清中のテストステロン濃度の減少が観察される(Silva et al.,1998)。ラット乳児にGABA受容体活性を増強させるジアゼパムを投与すると、雌では成育後に母性行動の低下が観察される(Del Cerro et al.,1995)。これは、発達時期のGABAが、成長後の性行動や母性行動に深く関与していることを示唆している。一方、GABAは、グルタミン酸脱炭酸酵素によって合成され、小胞型GABAトランスポーター(VGAT)によってシナプス小胞に蓄積された後にカルシウム依存性にシナプス間隙に放出される。本研究では、雄の性行動と雌の母性行動発達におけるGABAの役割を明らかにする目的で、tetracycline-controlled transactivator (tTA)システムを利用した誘導型VGATノックアウトマウスの作成を目指した。また、GABA神経伝達におけるVGATの役割を明らかにする目的で、完全型VGATノックアウトマウスを作成・解析した。 誘導型VGATノックアウトマウスの作成には、VGAT遺伝子にtTA2をノックインした遺伝子改変マウス(VGAT-tTA2マウス)が必要である。そこで、VGAT遺伝子エクソン1にtTA2をノックインしたターゲティングベクターを作成した。今後は、ES細胞にターゲティングベクターを導入し、相同組み換えのおこったESクローンを単離する。単離したES細胞を用いて、キメラマウスを作成し、最終的に誘導型ノックアウトマウスを作成する。 VGAT遺伝子のエクソン2およびエクソン3を欠損させた完全型VGATノックアウトマウスを作成した。解析した結果、出生日付近での死亡が観察された。また、完全型VGATノックアウトマウス全例で、口蓋裂を観察した。口蓋裂は、GABA合成酵素やGABA受容体のノックアウトマウスでも観察されることから、VGATはGABA神経伝達を担うことが示された。
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