2005 Fiscal Year Annual Research Report
周生期の視床下部シナプス形成に及ぼすエストロゲンの作用と作用機序
Project/Area Number |
17052024
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
金子 律子 (大谷 律子) 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (00161183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 知之 財)東京都医学研究機構, 神経機能・分子治療研究部門, 研究員 (70270668)
渡辺 知保 東京大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70220902)
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Keywords | 視床下部 / 性分化 / プロテオミクス解析 / 培養細胞 / エストロゲン / シナプシンI / MAPキナーゼ / CaMキナーゼ |
Research Abstract |
性周期や性行動の発現に極めて重要な働きをする視床下部が、周生期の性ステロイドホルモン環境により性的二型性を持つに至ることは、げっ歯類を用いた観察や実験から良く知られている。しかし性ステロイドが、こうした性的二型性を視床下部にもたらすメカニズムについては、未解明の部分が多い。本研究は、エストロゲンが周生期視床下部ニューロンのシナプス形成に及ぼす作用と作用機序について、周生期ラット視床下部細胞の培養系を用いて解明することを目的としている。 これまでに、周生期ラット(胎生16日)の視床下部および大脳皮質をエスラジオール(E2)添加または非添加で短期間及び長期に培養し、それらの細胞から蛋白質を抽出後、western解析やプロテオミクス解析を行った。まず、MAPキナーゼ3種類(ERK、JNK、p38)について検討したところ、短時間(1時間)E2添加により、JNKやp38は変化しないが、ERKの活性型は増加することが明らかとなった。しかしながら、プロテオミクス解析では、ERKやERKの上流に位置する細胞内シグナル伝達系の構成要素のE2による変化は検出されなかった。一方、長期(1週間)のE2処理では、大脳皮質および視床下部の培養細胞とも、多くの蛋白質の発現が変化することが、プロテオミクス解析から明らかとなり、視床下部培養細胞の方が、大脳皮質培養細胞に比べて、数倍多くのスポットがE2により発現が増大することが分かった。現在、差が明確であったスポットについて、質量分析により蛋白同定を行っている。 また、シナプス形成に対する性ステロイドの影響を解析するため、シナプシンI蛋白質に着目し、シナプシンI蛋白質の発現や細胞内局在を、培養視床下部細胞を用いて調べている。これまでの実験から、E2はシナプシンの発現量は殆ど変化させないが、CaMKによってリン酸化される部位のリン酸化シナプシンレベルを変化させることが明らかになった。現在、シナプシンIの動態をさらに詳しく調べるため、シナプシンI-GFP遺伝子を細胞内に導入するためのベクターをレンチウィルスを用いて作製したところである。
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