2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17054013
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
澁谷 浩司 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30261324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森口 徹生 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, COE拠点形成特任教員 (40323571)
大西 淳之 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (40261276)
佐藤 清敏 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (50401386)
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Keywords | 高血圧症 / WNK1 / SPAK / OSR1 / PHAII / Na^+-Cl^-共輸送体 / NCC / NKCC2 |
Research Abstract |
高血圧症は遺伝的素因と環境因子が複雑に絡み合って発症するが、中には単一遺伝子が原因の遺伝性高血圧症もある。我々は、WNK1の機能を明らかにする目的で、WNK1をbaitとした酵母two-hybridスクリーニングおよびエピトープタグと質量分析を用いた相互作用解析を行い、WNK1結合因子としてSTE20様プロテインキナーゼSPAKを同定した。特異的抗体を用いた共沈実験により、内在性のSPAKおよびSPAKとキナーゼドメインが90%以上の相同性をもつOSR1は、293細胞ならびにMDCK細胞内でWNK1と結合していることが認められた。また、WNK1はSPAKおよびOSR1のキナーゼドメインのC末側に存在する進化的に保存されたセリン残基(ラットSPAKのSer380およびマウスOSR1のSer-325)をリン酸化した。しかも、このセリン残基をアスパラギン酸に置換したOSR1変異体は野生型に比較してキナーゼ活性が上昇していた。これらのことから、WNK→SPAK/OSR1というキナーゼカスケードの存在が示唆された。PHAII患者の治療にはサイアザイド系利尿薬が有効であり、このサイアザイドの標的は腎臓遠位尿細管に存在するNa^+-Cl^-共輸送体(NCC)であることが知られている。そこで我々は、SPAKならびにOSR1の標的分子としてNCCに着目した。NCCは、12回膜貫通型の構造をもつNa^+-(K^+)-Cl^-共輸送体ファミリーに属する分子であり、全身に存在するNKCC1や腎臓ヘンレループに存在するNKCC2などもこのファミリーに含まれる。NKCC1の活性調節は、N末端側細胞内領域のリン酸化/脱リン酸化により行われていることが知られていたが、このリン酸化部位を含む領域はNKCC2やNCCのN末領域と非常に高い相同性を示していた。培養細胞およびin vitroの実験から、SPAK/OSR1がNKCC1,NKCC2およびNCCのN末制御領域を直接リン酸化することを明らかにした。これらの知見は、生体内においてWNK1→SPAK/OSR1→共輸送体というシグナル伝達経路が存在し、この経路の制御異常がPHAII発症の一因である可能性を示唆していると思われる。
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