2008 Fiscal Year Annual Research Report
西アジア旧石器時代の行動進化と定住化プロセスの関係
Project/Area Number |
17063002
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 宏之 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50292743)
|
Keywords | 考古学 / 先史学 / 旧石器時代 / 西アジア / シリア |
Research Abstract |
シリア・ビシュリ山系を対象フィールドとして、西アジアにおける部族社会の形成プロセスを探ることが本特定領域研究の共通課題である。本計画研究は、その最初期の段階である旧石器時代の人類社会・文化の中にその起源を探求することを目的とした。ヨーロッパを中心に展開する旧石器考古学では、装飾品・埋葬・道具の様式等の各種証拠から、現生人類がヨーロッパに出現した段階で、社会組織の複雑化が興起したと考えられてい, る。ヨーロッパへの現世人類の拡散は、西アジアを経由したに違いないが、当該地域での社会の複雑化に関する研究は具体的な展開を見ていない。本研究では、人類の行動進化と定住化プロセスの中にその具体的なプロセスを見いだすことを目指して、唯一豊富に残された石器資料から技術システムや管理・運用の方法を比較考古学の方法によって読み取り、社会進化の理論的な展望を構築する作業を継続して実施している。今年度は、ドイツ・ケルン大学に所蔵されているシリアの代表的な岩陰遺跡であるヤブルド遺跡の資料調査、中央ヨーロッパの中期・後期旧石器時代に属するミコキアン・オーリニャシアン・グラベッティアン・マグダレニアン等の資料調査、ロシア・アルタイ山地のデニソワ洞窟遺跡、カラボム遺跡、ウスチ・カラコル遺跡、カラマ遺跡等の資料調査を実施した。その結果、従来現生人類の登場とともに出現すると考えられてきた石刃技法は、すでに中期旧石器段階から認められ、その消長関係は、これまでの予測よりもはるかに複雑なことがわかった。ヤプルド遺跡でかつて出土したプレ・オーリニャシアン石器群は、中期旧石器時代前半から存在し、その後ムステリアンが発達することにより、その姿は一時消え去ることになる。各地における後期旧石器型石器群の出現は多様で、斉一的な移行モデルを描くことはできない。社会組織の複雑化は、一定の人口密度を必要としたに違いないので、地域遺跡群の形成と関係態の分析が課題となる。
|
Research Products
(9 results)