2009 Fiscal Year Annual Research Report
西アジア乾燥地帯への食料生産経済波及プロセスと集団形成
Project/Area Number |
17063003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西秋 良宏 The University of Tokyo, 総合研究博物館, 教授 (70256197)
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Keywords | ビシュリ山系 / ユーフラテス中流域 / 新石器時代 / 青銅器時代 / 石器製作技術 / ガーネム・アル=アリ / 遊牧 |
Research Abstract |
シリア北部、ビシュリ山系、ユーフラテス河中流域において、初期食料生産民の乾燥地開発状況をさぐるための遺跡分布調査、標本研究を二シーンにわたって実施した。また、国内では、その調査で得られたデータの解析、および文献調査などで得た所見の整理、統合作業を実施した。主たる成果は以下のとおりである。 (1)ユーフラテス河中流域で本特定領域総括班が進めているガーネム・アル=アリ遺跡の出土石器を詳細解析し、青銅器時代に特徴的な製作技術を解明、定義することに成功した。石器は大半が不定形の剥片であり、従来、同定不能とされてきたものである。その同定法を開発し得たことは、乾燥地に展開した遊牧民が残した短期逗留地を同定するための強力な武器となりうる。 (2)上記の鑑定法をもとに乾燥地で見つけた100以上にのぼる遺跡群を時代鑑定した。その結果、新石器時代、そして青銅器時代前期に遺跡数が急増していることが確定できた。セム系部族集団の形成が青銅器時代前期の遊牧民集団出現と一致するであろうことは従来、文献学の立場から示唆されてきたが、それを初めて考古学的証拠をもって裏付けたことになる。また、新石器時代・青銅器時代間に相当する銅石器時代の遺跡が著しく少ないことから、両者の社会は接続するものではなく、青銅器時代初めに大きな社会変化が生じたことも推察された。 (3)青銅期時代の乾燥地遺跡群は大・中・小などいくつかの遺跡クラスターが入れ子状になって構成されていることを突き止めた。おそらく、現代にみる部族社会のように等質で文節的な社会が青銅器時代に出現していたことを物語る。 (4)西アジア各地の乾燥地進出パタンを比較してみると新石器時代後期、および青銅器時代前期に画期がある点で共通している。これは牧畜技術の普及、遊牧の出現期と一致している。乾燥地開発と家畜利用との強い相関を再確認することができた。
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[Presentation] Abundant plant remains from a Natufian burnt building at Dederiyeh Cave, Northwest Syria2009
Author(s)
Tanno, K., G.Wilcox, M.Ishii, I.Fukumoto, H.Nakata, M.Yoneda, Y.Nishiaki, Y.Kanjo, S.Muhesen, T.Akazawa
Organizer
International Symposium on The Natufian Culture in the Levant II
Place of Presentation
Institut National de' Histoirede l'Art, Paris, France
Year and Date
20090907-20090911
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