2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17063004
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤井 純夫 金沢大学, 文学部, 教授 (90238527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 拓郎 金沢大学, 中近東文化センター, 研究員 (90276006)
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Keywords | セム系 / 部族社会 / 遊牧民 / 墓制 / 西アジア |
Research Abstract |
主要なフィールドであるビシュリ山系での調査立ち上げが諸般の事情で遅れたため、本年度は、周辺比較対象地域(オマーン、バーレーン、カタール、エミレーツ)における遺跡踏査を先行実施した。その結果、以下のような見通しが得られた。 1)中東世界のセム化が具体的に進行し始めたのは青銅器時代の初頭とされているが、この時期の周辺乾燥域では墓制に大きな変化が認められる。従って、中東世界のセム化の過程を墓制面から追跡するという作業仮設の妥当性が再確認された。 2)前期青銅器時代セム系遊牧部族の墓制には、大別して二つのタイプが認められる。一つは、シナイ半島北部からパレスチナ、ヨルダン、シリアへと時計回りに展開したと考えられるシスト墓の文化である。その分布は、北西セム語集団の領域とほぼ重なる。従って、シスト墓系文化の展開は、北西セム語集団の形成過程を追跡する際のキーとなり得ることが判明した。 3)もう一つは、シナイ半島南端からサウジアラビア西部、イエメンを経て、オマーン、エミレーツ東部にまで、反時計回りに展開したと考えられる円筒墓の文化である。円筒墓は、南(西)セム語集団の形成過程を追尾する際の指標となり得る。 これらの見通しを得たことによって、次年度以降の研究・調査の具体的方向性が定まった。ビシュリ山系(シリア東部)とジャフル盆地(ヨルダン南部)におけるシスト墓の発掘調査によって北西セム語集団の形成過程を解明すると同時に、アラビア半島南半の円筒墓に関する広域踏査を通して南(西)セム語集団の展開を追跡したい。
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