2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17063004
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤井 純夫 Kanazawa University, 歴史言語文化学系, 教授 (90238527)
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Keywords | セム系 / 部族社会 / 遊牧民 / 墓制 / ビシュリ山系 |
Research Abstract |
ビシュリ山系北麓ケルン墓群の発掘調査を、2008年6月、同年11月、および2009年3月の、計3回実施した。6月の第一次調査では、ヘダージェ1=ケルン墓群の西端に位置する10号ケルン墓を発掘し、2重の周壁に囲まれた十字型シスト墓の内部構造を明らかにした。また、出土遺物などの比較研究により、前期青銅器時代末から中期青銅罪時代初頭という年代観を得た。11月の第二次調査では、同ケルン墓群の9-1号ケルン墓を連続的に発掘し、ケルン墓群内部における型式変遷を追跡した。その結果、同ケルン墓群のケルン墓が3期に時期区分できることが判明した。3月の第三次調査では、同ケルン墓群の11-14号ケルン墓、ヘダージェ3=ケルン墓群の1-2号ケルン墓、ヘダージェ4=ケルン墓群の2号ケルン墓をそれぞれ発掘し、上記の年代観を支持する新たな資料を得ると同時に、これらを統合してヘダージェ編年を確立した。 これら一連の作業によって、1) ビシュリ山系北麓に集中するケルン墓群が前期青銅器時代末から中期青銅器時代初頭に位置づけられること、2) 比較的短期間の造営であったこと、3) 造営集団は遊牧民であったこと、が確認された。従って、ビシュリ山系北麓のケルン墓群が、メソポタミア粘土板文書の言う最古のセム系集団「マルトゥ/アムッル」の墓域であった可能性が、ますます高くなった。このような具体的展望を得たことが、本年度の大きな成果である。
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