2005 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族化合物の炭素-水素結合の活性化に基づく高度な増炭素反応
Project/Area Number |
17065016
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
垣内 史敏 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70252591)
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Keywords | 炭素-水素結合切断 / 炭素-ヘテロ原子結合切断 / 炭素-炭素結合生成 / 還移金属錯体 / 触媒反応 / 芳香族化合物 |
Research Abstract |
本研究では、芳香族炭素-水素結合を用いた高効率・高選択的な触媒反応の開発を目指した。特に、移金属錯体触媒を用いた芳香族化合物とオレフィンとの反応に関する反応機構、芳香族ケトンと有機ホウ素化合物とのカップリング反応の反応機構を解明を行った。 はじめに、芳香族ケトンのオルト位選択的アルキル化反応の機構についてNMRスペクトルなどの分光学的手法を用いて検討を行った。その結果、[Ru(H)(o-C_6H_4PPh_2)(PPh_3)_2(CO)]錯体が高い触媒活性を示すことが明らかとなった。また、芳香族ケトンのオルト位炭素-水素結合がルテニウムへ酸化的付加した錯体が、触媒サイクル中に存在していることも明らかとした。[Ru(H)(o-C_6H_4PPh_2)(PPh_3)_2(CO)]錯体を用いれば、これまで130℃程度の反応温度が必要であった反応を、室温で行えることを明らかとした。また、触媒の添加量を芳香族ケトンに対して1/1000当量に低減した場合でも、定量的にカップリング生成物を与えるという、これまでにない高効率な触媒系の構築に成功した。 芳香族ケトンのオルト位に炭素-水素結合と炭素-酸素結合の両方が存在する場合、室温では炭素-水素結合が選択的に切断され、80℃位で炭素-酸素結合が効率良く切断されることも明らかとした。このように、不活性炭素結合切断の選択性を温度により制御できることを初めて明らかとした。 オルトフェノキシアセトフェノンと[Ru(H)(o-C_6H_4PPh_2)(PPh_3)_2(CO)]との反応をピナコロシ中で行ったところ、Ru-H種がピナコロンのカルボニル基へ付加し、Ru-OR種が生成することを見出した。また、この過程は、炭素-酸素結合切断によるRu-OR'種生成過程より速いことを実験的に明らかとした。これらの知見は、不活性炭素結合切断を利用する触媒反応の開発において有用な指針を与えるものと考えている。
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