2006 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族化合物の炭素-水素結合の活性化に基づく高度な増炭素反応
Project/Area Number |
17065016
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
垣内 史敏 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70252591)
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Keywords | ルテニウム錯体触媒 / 芳香族化合物 / 芳香族炭素-水素結合切断 / 炭素-炭素結合生成 / 有機ホウ素化合物 / 不活性結合切断 / アルケニルエステル / 炭素-酸素結合切断 |
Research Abstract |
本研究では、配位牲の官能基を持つ芳香族化合物とアルケニルエステルとの反応により、芳香環上への位置選択的アルケニル基導入反応の開発を目指して検討を行った。この反応は有機ハロゲン化物の使用を必要としないという特長を有している。 配位性の置換基としてピリジル基をもつ芳香族化合物を基質に用い、アルケニルアセテートとの反応を触媒量のRu(cod)(cot)錯体存在下、トルエン還流条件下で行った。その結果、オルト位にアルケニル基が導入された生成物が高収率で得られることがわかった。出発原料のアセテートのβ位の置換基をかさ高くすると、生成物のE/Z比の向上が見られた。β-スチリルアセテートを用いた場合には、E/Zのみがほぼ定量的に得られた。 本反応では反応後に酢酸が副生するが、ほとんどの場合において塩基の使用の有無に関係無く同程度の収率で生成物が得られた。原料が酸に不安定な場合には、2,6-ルチジン共存下で反応を行うことにより収率の飛躍的な向上が見られた。本アルケニル化反応では、1,1-二置換やシクロヘキセニルアセテートなども利用することが可能である。 2-(1-ピロリル)ピリジンとβ-スチリルアセテートとの反応では、ピロール環の2,5位にスチリル基が導入された生成物が得られた。この生成物では、ベンゼン環一ビニル基一ピロール環が並んだ共役構造を有している。生成物のUVスペクトルを測定したところ、原料の2-(1-ピロリル)ピリジンと比較して吸収極大が長波長側ヘシフトしていた。このことより、導入したスチリル基がピロール環と共役を形成していることが明らかとなった。このように、本研究で開発した手法を用いれば、有機ハロゲン化物を用いる従来型の合成手法とは全く異なった形式でπ共役化合物の合成が達成できることが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)