2007 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族化合物の炭素-水素結合の活性化に基づく高度な増炭素反応
Project/Area Number |
17065016
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
垣内 史敏 Keio University, 理工学部, 教授 (70252591)
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Keywords | ルテニウム錯体触媒 / 芳香族化合物 / 芳香族炭素-水素結合切断 / 炭素-炭素結合生成 / 炭素-酸素結合切断 / 不活性結合切断 / アルケニルエステル / ヘテロ芳香族化合物 |
Research Abstract |
アリールピリジン類とアルケニル酢酸エステルとの反応をRu(cod)(cot)触媒を用いて行うことにより、芳香環ヘアルケニル基が選択性および収率良く導入できることを見出した。この新規触媒反応は、環境への負荷が大きい有機ハロゲン化物や化学量論量の酸化剤、また塩基を用いる必要が無いクリーンなプロセスである。この反応の生成物は、有機合成化学分野において重要な合成中間体であるスチレン誘導体を入手容易な化合物から合成できるため、有機合成化学において有用な合成手法であるといえる。 この反応は、芳香族ならびにヘテロ芳香族化合物に対して適用することが可能である。 N-ピリジルピロールとスチリルアセテートとの反応では、ピロール環の2,5-位にスチリル基が導入された生成物を高収率で与えた。フェニル基以外にも、ナフチル基やインドリル基などの様々な芳香環を持つアルケニルアセテートを用いても、目的のカップリング生成物が収率良く得られた。これら生成物のUVならびに蛍光スペクトルを測定したところ、出発物質と比較して吸収極大波長が長波長側へかなりシフトしていた。これらのことから導入したアルケニル基とピロール環上のπ電子は共役していることが分かった。 この反応は、芳香族化合物の炭素-水素結合の切断とアルケニルアセテートの炭素-酸素結合の切断という、困難な2つの過程を経て進行すると考えられた。反応機構に関する知見を得るために、NMR実験や重水素標識実験を行った。その結果、反応はルテニウム錯体による炭素-水素結合の切断過程を含むこと、また炭素-酸素結合切断はβ-アセトキシ脱離を経て進行することが明らかとなった。さらに、Z-体のアルケニルアセテートの反応性が、E-体と比較して極めて高く、生成物の多くがZ-体から生成するという興味ある知見も得た。
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Research Products
(2 results)