2007 Fiscal Year Annual Research Report
飽和炭素分子の炭素-水素結合の均一切断に基づく高度酸化手法の開発
Project/Area Number |
17065019
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
石井 康敬 Kansai University, 化学生命工学部, 教授 (50067675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大洞 康嗣 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (50312418)
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Keywords | N-ヒドロキシフタルイミド / 酸化反応 / 飽和炭化水素 / アルカン活性化 / ベックマン転位 / トリホスファゼン / フェノール / ε-カプロラクタム |
Research Abstract |
本研究は、N-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)を分子触媒として利用し、従来にない触媒的炭素ラジカル生成を経る不活性炭素分子の酸化反応による、様々な有用な有機化合物の新合成法の基礎原理を確立することを目標としている。平成19年度は、NHPIを触媒として用いた1,1-ジフェニルエタン類からの酸素酸化によるフェノール合成反応の検討を行い、高選択的に種々の置換フェノール類が得られることを見出した。異なるアリール置換基を有する1,1-ジフェニルエタン類を用いた反応においては、中間体のヒドロペルオキシドの構造によってフェノール類への分解過程が異なり、二種類のフェノール体が生成する可能性が考えられるが、今回得られた結果から、本酸化反応における選択性は芳香族置換基の電子的性質に大きく依存しており、より強い電子供与基を有する芳香族置換基が優先的にフェノール体へと変換されることがわかった。また、我々は平成18年度にNHPIを触媒としたシクロヘキサンと亜硝酸tert-ブチルからのε-カプロラクタムの一段合成反応に関する研究成果を報告しているが、平成19年度は本反応プロセスにおいて、収率の向上等更なる改善が必要であった、シクロヘキサノンオキシムからのベックマン転位反応のステップの効率化を目的とした研究を行った。その結果、トリホスファゼン(TAPC)を触媒として用いることによって効率的にベックマン転位反応が進行し、高収率でε-カプロラクタムへと変換できることを見出した。これら本年度の研究成果は、NEPIが、炭素-水素結合の均一開裂を伴う新反応を提供するだけでなく、従来にはない、高選択的かつ高効率的酸化反応における有機触媒として、ラクタム、フェノール等の付加価値の高い工業的化成品製造において実用化レベルで用いることができることを示している。
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