Research Abstract |
本研究では,光を空気あるいは真空に閉じこめた可変中空光導波路を実現し,10%を超える巨大な可変伝搬特性を具現化するとともに,巨大な波長可変特性を可能とする光フィルタ/レーザ,光ルーティング素子,光スイッチ,光遅延線など,新世代の光通信ネットワークデバイスの実現を目指して研究を進めた. 中空導波路を構成する片側多層膜上に回折次数一次の円弧状グレーティングを装荷した可変分布反射器を試作した.反射スペクトルの可変特性を評価し,最大160nmの波長可変動作を実現した.この値は伝搬定数換算で10%以上の変化に相当し,従来の熱光学効果・電気光学効果では実現し得ない巨大な値である.また,中空導波路の温度依存性を実験的に見積もるため,GaAs・Si基板上にBragg反射鏡を製作し,Bragg波長の温度依存性を測定し,従来の導波路に比べ1〜2桁低い温度依存性を実証した.Bragg波長のチャープ化のためテーパコア構造を導入した可変分散補償回路の研究を進めた.本構造ではテーパ角,コア厚の2つのパラメータ制御で中心波長,波長分散値を独立に可変できるため,柔軟で制御性に優れた可変波長分散補償器が期待できる.テーパ角の制御により中心波長を固定しながら,正負に渡る分散可変動作を観測した.さらに,バイモルフ効果を用いたMEMSアクチュエータを中空導波路に集積した構造を試作した.メンブレーン状のSi/SiO2多層膜上にメタル層を装荷し,メタルと多層膜材料の熱膨張差を利用してコア厚を変位させる.4.8Wの電力印加により,最大5.2μmのコア厚変位が観測された.この構造を用いてBragg反射スペクトルのコア厚依存性を測定したところ,2.6nmのBragg波長のブルーシフトが観測された.微小中空コア厚を有する中空導波路を作製することで,本構造を用いて数百nmに達する広帯域波長可変動作が期待できる.
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