Research Abstract |
昨年度, 本研究で提案してきたチャープ構造フォトニック結晶結合導波路を利用して, 世界で初めてスローライトパルスの遅延時間のチューニングを達成し, 光バッファメモリの基本動作を実証することに成功した.本年度は, その基本特性を大幅に改善した.具体的には, デバイスを長尺化することで遅延時間を最長160psまで延長した.これは昨年度の4倍であるなおかつサブTHzの帯域を保つことで, 1psパルスの形状をほとんど変化させずに伝搬させることにも成功した.さらにもともとチャープを与えず, ポストプロセスによって均一化されたデバイス中央部を選択的に加熱することで, 折り返し形状のチャープを形成し, 最長で105ps, パルスのビットシフト22を観測した.これらも昨年度の27ps, 8ビットを大幅に上回る成果である.さらに同デバイスに動的制御を加え, 遅延時間を原理以上に延長する方法を検討した.従来の動的制御は結合共振器を利用して計算, 実験されてきたが, 動作が複雑で, 遅延できるパルスの効率が低いという問題があった.本研究では, 光励起とキャリアプラズマ効果を組み合わせてチャープを動的に付与することを想定し, 時間領域有限差分法を用いて光伝搬をシミュレーションしたところ, 光パルスが効果的に停止する現象が確認され, 上記のチャープ構造におけるスローライトの理論限界を実効的に10倍以上向上させることができると判明した.これが実現されれば, ナノ秒オーダーの広帯域スローライト光バッファメモリが得られると期待される.
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