Research Abstract |
新世代フォトニックネットワークにおいては,波長チャネルをスイッチして光信号の自在なルーティングを実現する技術が必要になると予想される.本研究では,そのために不可欠なヒットレス波長選択スイッチと,波長スペクトルを符号多重化してさらにルーティング制御を行うための波長ラベル符号化・識別回路の実現を目指している.初年度はヒットレス波長選択スイッチの実現を目指した.このデバイスは,チューナブル波長フィルタの中心波長を変化させた時に他の波長チャネルを遮断(ヒット)せずに,新たな波長チャネルにドロップ波長(フィルタ中心波長)を切り替える新機能デバイスである.この新機能を実現するため,本研究では高次直列結合マイクロリング共振器の中心波長を熱光学(TO)効果によって個別に制御して,中心波長が全て一致したときにだけドロップポートにスペクトルピークが出現し(ON状態),中心波長をずらした状態では全波長チャネルがスルーポートに伝達される(OFF状態)原理を考案し,このデバイスの実現と高性能化を目指した. 本研究に先立って昨年度に,まずポリマーをコアに用いた2次直列結合マイクロリング共振器によってヒットレス波長スイッチを実証したが,応答速度(〜2msec)と波長再現性(0.16nm)に問題があった.そこで本年度は,誘電体材料(Ta_2O_5-SiO_2)を用いて同様の素子を製作し,クロストーク-20dB,消光比40dB,中心波長再現性0.01nm以下,応答速度15μsecと,いずれもポリマー材料よりも優れた特性を実証した.ただし,誘電体材料の熱光学係数はポリマーよりも1桁小さいため,FSRおよび波長選択範囲が狭くなるが,2種類の異なる半径の直列結合によるバーニャ効果を用いてFSRおよび波長選択範囲を約10倍の23nmに大幅に拡大して,また正負の両方向へのスイッチングも可能なることを実証した.
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