2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17071003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今田 正俊 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (70143542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
求 幸年 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (40323274)
中辻 知 東京大学, 物性研究所, 准教授 (70362431)
宮川 和也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (90302760)
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Keywords | 量子臨界現象 / 量子スピン液体 / フラストレーション / 金属絶縁体転移 / モット絶縁体 / 強相関電子系 / 新奇量子現象 / 特異な超伝導 |
Research Abstract |
新量子相と量子臨界現象において、電子系とヘリウム系の両者を比較検討し、共通する新しい概念を確立することが本プロジェクトの目標であった。この目標は達成され、理論・実験の両面から顕著な進展があった。以下に今年度の成果を述べる。 まず新量子相の探求について述べる。ドープされた2次元モット絶縁体の電子構造が、過ドープ域での通常のフェルミ液体からトポロジー転移によって明確に隔てられ、非フェルミ液体となる新量子相を形成することがクラスター動的平均場近似によって確立した。この量子相がフェルミ面のポケット/アーク構造、s波的にブリルアンゾーン全面で開く擬ギャップ、スペクトル密度の電子ホール非対称性、準粒子分散の折り返し構造やキンクとwaterfall構造などで特徴づけられ、銅酸化物の実験事実を定量的にも理解できることを示した。さらに強い電子相関と幾何学的フラストレーションの共存する系で現れる新量子相も追究し、カゴメ格子上のハバード模型におけるスピンカイラリティー機構による重い電子的挙動の発現や、パイロクロア格子上の二重交換模型における新奇な常磁性金属状態の発現を明らかにした。またモット絶縁体における新量子相である量子スピン液体状態の解明も進んだ。スピン液体状態が実現していると考えられるk-(ET)_2Cu_2(CN)_3のモット転移近傍に焦点を絞り圧力下電気抵抗測定を行ない、モット転移の臨界点に近づいていると思われる圧力領域において、転移よりも上の温度から電荷ギャップが小さくなっているという現象をあたらたに観測した。 また新奇量子臨界現象の探求も進んだ。量子三重量子臨界点のまわりの揺らぎが通常の量子臨界とは異なる臨界性を示すことを包括的に明らかにし、量子三重臨界性に関するスピンゆらぎ理論を提唱した。この臨界性がYbRh_2Si_2、CeRu_2Si_2、YbAlB_4の異常な性質をよく説明することを明らかにした。また重い電子系超伝導体YbAlB4においてゼロ磁場量子臨界点が存在することを明確にすると同時に、量子振動の測定からその電子状態を明らかにした。この量子臨界点がf電子系では初めて価数揺動を伴い現れていることを見出した。
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Research Products
(84 results)