2009 Fiscal Year Annual Research Report
超強磁場X線分光・中性子散乱による局在遍歴電子相関系の研究
Project/Area Number |
17072002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野尻 浩之 Tohoku University, 金属材料研究所, 教授 (80189399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲見 俊哉 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (30354989)
松田 康弘 東京大学, 物性研究所, 准教授 (10292757)
加倉井 和久 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (00204339)
松田 雅昌 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (90260190)
大山 研司 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60241569)
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Keywords | 強磁場 / スピン科学 / X線分光 / 中性子散乱 / 量子ビーム |
Research Abstract |
X線や中性子などの量子ビームと強磁場の組み合わせは、様々な磁場誘起相転移研究の強力な道具である。本年度は、X線回折とX線分光、硬X線XMCD、軟X線MCDの実験の推進、定常炉を用いたパルス磁場下中性子回折実験をフランスILL原子炉などで実施、J-PARCのパルス中性子実験において40テスラの世界記録を樹立、アメリカのSNSのパルス中性子施設での30テスラのラウエ法回折実験成功等、この分野で世界をリードする成果をあげ、世界標準化を進めた。回折実験では、共鳴散乱の利用を推進し、容易面型の磁性体にもかかわらず多段のメタマグ転移を示すTbB_4の磁気構造に関して、偏光成分を分離した共鳴回折実験を行い、ATS散乱の寄与を排除して、磁気散乱を成分に分離する手法を確立した。これは、偏極中性子回折に匹敵する手法として今後の発展が期待される。MCDにおいては、価数揺動を示すEu金属間化合物において、X線MCDの実験と解析を進め、強磁場XMCDの微視的な理論を確立することに貢献した。また、3d遷移金属への応用可能なパルス強磁場軟X線MCDでは、20テスラを越える実験に世界で初めて成功した。金属絶縁体転移を示すことで注目されているパイロクロア酸化物Cd_2Os_2O_7の強磁場XMCDにより、低温での絶縁体相の起源の解明において重要となる軌道磁気モーメントの寄与を調べた。その結果、軌道磁気モーメント(m_L)のスピン磁気モーメント(m_s)対する比が約17%であることを明らかにした。中性子回折においては、スピネル反強磁性体CdCr_2O_4において、28テスラ以上で現れる磁化プラトー相の磁気構造を直接決定し、この構造が普遍性を持つことを証明した。また、これまで強磁場中磁気構造が決定していなかったマルチフェロイック物質MnWO_4の磁場中磁気構造を、中性子回折により直接決定し、メモリ効果と磁気構造の関係を明らかにした。
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