2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17073002
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西川 恵子 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (60080470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 剛 千葉大学, 大学院・自然科学研究科, 助手 (80332633)
東崎 健一 千葉大学, 教育学部, 教授 (30102031)
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Keywords | イオン液体 / 凝固・融解過程 / 協同現象 / スローダイナミックス / 水溶液 / 部分モルエンタルピー / 部分モルエントロピー / pre-melting |
Research Abstract |
イオン液体は様々な特異的な性質を示し、中には液体の概念の転換を迫るものもある。イオン液体をイオン液体ならしめている要因は何かを、凝固・融解過程およびイオン液体の水溶液化学の観点から明らかにする試みを開始し、今年度は、以下の結果を得た。 <イオン液体の凝固・融解過程>nJの感度と安定性を有し、0.01mK/s程度までの非常に遅い温度変化(多くの変化で準静的と近似可能)の実験も可能な示差熱分析(DSC)を用いて、イオン液体のプロトタイプである[bmim]^+のCl塩、Br塩、およびFeCl_4塩を試料として実験を行った。 Cl塩、Br塩の結果を纏めると、[bmim]^+のbutyl基の立体配座の協同的変化が凝固・融解過程と連動して、複雑なpremelting現象や熱履歴現象を引き起こしていることが明らかになった。また、[bmim]Br塩の融解過程で、0.02mK/sの非常にゆっくりした昇温速度の実験を行った。数百分子が協同的に数分の時間スケールでリズム的構造変化する(Zhabotinskii化学反応と類似?)スローダイナミックスを観測した。わずかに生じた熱の不均一さに一部のカチオンがGT⇔TTのリズム的構造変化をしているものと思われる。フーリエ変換すると、数分の周期的変化であることが明らかになった。 磁石に付く磁性イオン液体[bmim]FeCl_4を試料として、磁場が凝固・融解過程に及ぼす効果を解明する実験を行った。磁場がない場合、結晶化しようとする構造と磁場効果でイオンが並ぼうとする構造が異なっており、双方の拮抗で凝固点・融解点が決まっているものと思われる。 <イオン液体の水溶液化学>イオン液体[bmim]BF_4および[bmim]I水溶液の部分モルエントロピー及び部分モルエンタルピーを求めた。水溶液にイオン液体を1単位ごと加えていくとエントロピー的およびエンタルピー的にどのような利得があるか、微視的な熱力学量を求めて、水とイオンの相互作用を議論した。 陰イオンが水の構造化に及ぼす影響の方が陽イオンより、多様で複雑であることが明らかになったので、陰イオンを系統的に変え、エンタルピー・エンタルピー相互作用を求めることにした。現在、ハロゲンイオンと代表的な陰イオンについての実験を終了し、イオン液体を構成する代表的な陰イオンへと実験を進めている。
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