2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17073002
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西川 恵子 千葉大学, 大学院自然科学研究科, 教授 (60080470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城田 秀明 千葉大学, 大学院自然科学研究科, 助教授 (00292780)
鮎沢 亜沙子 千葉大学, 大学院自然科学研究科, 助手 (40431754)
東崎 健一 千葉大学, 教育学部, 教授 (30102031)
森田 剛 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (80332633)
若狭 雅信 埼玉大学, 大学院理工学研究科, 教授 (40202410)
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Keywords | イオン液体 / 凝固・融解過程 / 協同現象 / スローダイナミクス / リズム的相変化 / 水溶液 / 緩和時間 / 部分モル量 |
Research Abstract |
イオン液体は様々な特異的な性質を示し、中には液体の概念の転換を迫るものもある。イオン液体をイオン液体ならしめている要因は何かを、凝固・融解過程、イオン液体の水溶液化学、構造の観点から明らかにする試みをしており、今年度は以下の結果を得た。 <イオン液体の凝固・融解過程>nJの感度と安定性を有し、0.01mK/s程度までの非常に遅い温度変化(多くの変化で準静的と近似可能)の実験も可能な手作りの示差熱分析(DSC)で、種々のイミダゾリウム系のハロゲン塩を試料として実験を行った。 [bmim]^+の場合、butyl基の立体配座の協同的変化が凝固・融解過程と連動して、複雑なpremelting現象や熱履歴現象を引き起こしていることが明らかになった。また、[bmim]Br塩の融解過程で、0.02mK/sの昇温速度の実験では、多くの分子が協同的に数分の時間スケールでリズム的構造変化する(Zhabotinskii化学反応と類似)スローダイナミックスを観測した。わずかに生じた熱の不均一さに一部のカチオンが立体配座のリズム的構造変化を引き起こしているものと思われる。リズム的相変化は、[bmim]塩に限らず、立体配座の変化と相変化が協同的に起こるイオン液体に特有の現象であり、初めて発見された興味深い現象である。イオン液体の液体中または結晶中には、ドメイン構造があるとされてきたが、凝固・融解に係わるドメイン構造は、分子数にして10^<13>〜10^<15>個程度のイオンであることが、初めて明らかになった。 <イオン液体の水溶液化学>イオン液体を構成するイオンの特異性を、部分モル量測定とNMRによる拡散定数や緩和時間の立場から調べている。水溶液にイオン液体を1単位ごと加えていくとエントロピー的およびエンタルピー的にどのような利得があるか、微視的な熱力学量を求めて、水とイオンの相互作用(特に疎水性および親水性)を議論した。また、NMR測定からは、イオンの周りのcage構造の存在が明らかになった。 <結晶構造>結晶化しにくいと言われているイオン液体のいくつかの結晶を得ることに成功し、構造解析を行った。結晶中で複数の立体配座を採る結晶もあり、立体配座の多様性がイオン液体の特異な性質と深く関係することは類推されていたが、結晶構造からもその仮説が確かめられた。
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