2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17073003
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 耕一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 准教授 (90232678)
|
Keywords | イオン液体 / 局所構造 / 熱拡散定数 / 振動冷却速度 / フェムト秒 / 近赤外分光法 / 時間分解ラマン / 芳香族性 |
Research Abstract |
東京大学に既設のピコ秒時間分解ラマン分光計を利用して,最低励起1重項状態のtrans-スチルベンの振動緩和速度をイオン液体中において測定した.昨年度よりも測定点を増加させ,7種類の芳香族系イオン液体中および非芳香族系イオン液体中において振動冷却速度を測定した.イオン液体の熱拡散定数は5.4-7.5×10^<-8>m^2s^<-1>であって有機溶媒の値(8.0-10×10^<-8>m^2s^<-1>)よりも格段に大きいにもかかわらず,測定されたイオン液体中での振動冷却速度は0.082-0.12ps^<-1>であって通常の有機溶媒中での測定値(0.082-0.14ps^<-1>)と類似していた.この結果は,振動冷却速度が溶媒バルクの熱拡散定数と良く相関する分子液体とは明らかに異なる.今回の測定結果は,イオン液体中に局所構造が存在し,バルクでの長距離・長時間の熱拡散が局所構造間の境界でのエネルギー移動に支配されると考えるとよく説明できる. 新たに波長1600nmまでの近赤外領域で感度の高い液体窒素冷却型InGaAsアレイ検出器(512チャンネル)とこの検出器と適合する焦点距離40mmの分光器を購入し,既設の高繰り返しフェムト秒レーザーシステム(繰り返し周波数1MHz)と組み合わせてフェムト秒時間分解近赤外分光計を製作した.可視から近赤外領域での高繰り返しフェムト秒白色光パルスの発生に成功し,従来のキロヘルツレーザー光源に比べて約1/1000の小さい尖頭出力での高精度な超高速時間分解分光測定の実現に近づくことができた.
|