2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17073003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 耕一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 准教授 (90232678)
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Keywords | イオン液体 / 巨視的物性 / 微視的溶媒和構造 / 局所構造 / フェムト秒 / 近赤外分光法 / ビアントリル / 電荷移動反応 |
Research Abstract |
本補助金によってパルス幅35フェムト秒, 繰り返し1キロヘルツのチタンサファイアレーザーシステムを新たに購入して, 東京大学に既設の分光器およびマルチチャンネル検出器を組み合わせてフェムト秒時間分解紫外可視分光計およびフェムト秒時間分解近赤外分光計を製作した.新たな分光計は, 研究代表者らが以前に開発した分光システム(パルス幅約150フェムト秒)に比べて時間分解能を約4倍向上させることができた。出力光パルスのエネルギーや時間幅の変動に起因する白色光の揺らぎも従来のシステムに比べて大幅に低減できた.数十フェムト秒の時間領域において従来よりも高精度の紫外可視スペクトルおよび近赤外スペクトルの測定を開始することができた. フェムト秒時間分解近赤外分光計を利用して, イオン液体中における9, 9'-ビアントリルの光誘起電荷移動反応の進行を詳しく調べた. 9.9'-ビアントリルは, 光誘起電荷移動反応を起こす基本的なモデル分子である. 通常の分子液体(極性溶媒)中では, 電荷移動反応の進行を示す孤立励起状態の滅衰は単一指数関数でよく表されるが, イオン液体中での減衰は1ピコ秒以下および30ピコ秒の2成分の時定数を示した. この結果は, イオン液体中の溶媒和環境が単一ではないことを示している. 時間分解可視分光法を用いて, イオン液体中で光励起されたヨウ素分子の高速動力学の解明を開始した.ヨウ素分子は分子の中で最も単純な等核二原子分子の一種であり, 分子内の振動自由度が1個しかないため, ヨウ素分子の示す動力学はイオン液体中における溶媒和環境を鋭敏に反映すると期待される.
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Research Products
(5 results)