2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17073004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山室 修 東京大学, 物性研究所, 助教授 (20200777)
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Keywords | イオン液体 / 熱容量 / 中性子散乱 / ガラス転移 / ボゾンピーク / 速い過程 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度の1-butyl-3-methylimidazolium(bmim)系の4種類のイオン液体(bmimCl,bmimI,bmimFeCl_4,nbmimFeCl_4)の実験の発展として、bmimTFSIとeminTFSIの熱容量と中性子散乱を行った。ここで、TFSIはbmimはbis(trifluoromethanesulfonyl)imideの略、emimは1-ethyl-3-methylimidazoliumの略である。TFSIはこれまでの陰イオンより大きく、emimはこれまでの陽イオン(bmim)より小さいため、イオンサイズの効果をより幅広く研究できる。さらに、本年度は、イオン液体を溶媒とする高分子ゲル(イオンゲル)の実験を始めた。実際に実験を行ったのは、イオン液体がemimTFSI、高分子がPMMAの系である。イオンゲルは柔軟、透明、丈夫な固体薄膜であり、従来の高分子固体電解質に比べて非常に高いイオン伝導性を示すことから、電池材料以外にもアクチュエータなど様々な応用が考えられている。 ガラス転移温度は陰イオンサイズの増大とともに低下するが、陰イオンサイズ4Å以上になると、今度は逆に上昇することが分かった。また、陽イオンサイズが小さくなると、ガラス転移温度が減少することを見いだした。 イオンゲルの中性子中弾性散乱実験の結果、イオン液体濃度が高いと、emimTFSIはゲル中では高分子網目に束縛されながらジャンプ拡散をしているが、イオン液体濃度が低くなると、高分子とほぼ連動して運動していることが分かった。熱容量測定の結果、前者の場合はイオン液体の運動の凍結と高分子の運動の凍結に対応してガラス転移が2つ出るが、後者の場合は1つしか出ないことが確かめられた。
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