2006 Fiscal Year Annual Research Report
非線形分光法によるイオン液体中のエネルギーおよび分子ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
17073012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 佳文 京都大学, 国際融合創造センター, 助教授 (60221925)
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Keywords | イオン液体 / 過渡回折格子法 / 音速分散 / 構造緩和 / 拡散 / ラマン分光 / 溶媒和 / 金ナノ粒子 |
Research Abstract |
今年度においては過渡回折格子(TG)法を利用して、イオン液体中での光励起分子の振動緩和観測とそれにともなう音響信号の測定をおこなった。特にMHzから数十GHzのひろい周波数領域にわたってイオン液体の音速分散を評価をすすめた。その結果、[BMIM][TFSI]や[BMIM][PF6]のようなイオン液体においては、非常に大きな音速分散が存在し、緩和時間が百ピコ秒程度であることがわかった。またその分散曲線は単一の指数関数で表現するのが困難であった。この音速分散はイオン液体の構造緩和に由来するものと考えられ、今後定量的な解析をすすめていく予定である。 TG法を利用してベンゾフェノンの水素引き抜き反応で生じる反応中間体ラジカルの拡散定数の評価を、イミダゾリウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系など様々なカチオン種のイオン液体中で検討をおこなった。その結果イミダゾリウム系のイオン液体では種類によらず、ラジカルの拡散係数は安定分子と比較して4倍程度遅く、通常の溶液よりも違いが大きく現れることが明らかとなった。またホスホニウム系のイオン液体ではホスホニウムイオンラジカルがTG信号に強く現れることが明らかとなった。 またイオン液体での溶媒和の詳細を検討するために、ラマン分光法によりジメチルニトロアニリンのN02伸縮振動の溶媒効果を検討した。その結果、イオン液体における溶媒和の揺らぎの大きさがカチオンの種類よりもむしろアニオンの種類に大きく依存するという興味深い結果を得た。 レーザーアブレーションの手法によりイオン液体中での貴金属微粒子の合成の試みをおこない、金箔をNd : YAGレーザーの基本波でアブレーションすることにより、金ナノ粒子の合成に成功した。生成するナノ粒子の安定性はカチオンの種類に依存することが明らかとなった。
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