2007 Fiscal Year Annual Research Report
非線形分光法によるイオン液体中のエネルギーおよび分子ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
17073012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 佳文 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60221925)
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Keywords | イオン液体 / 過渡回折格子法 / 音速分散 / 拡散 / ラジカル / 超臨界二酸化炭素 / プロトン移動反応 |
Research Abstract |
(1)イオン液体中での構造緩和と超高速反応 今年度においては、フェムト秒再生増幅装置を新規に購入して、フェムト秒での過渡回折格子(TG)測定システムの改良をすすめ、また時間分解蛍光、時間分解吸収を並行して行えるようレーザーシステム全体の整備をおこなった。昨年度来研究を続けてきたTG法を利用した音速分散の評価について、定量的な解析をすすめた。イオン液体中での測定された誘電緩和のデータをもとに音速分散を評価したところ、アニオンの種類によって構造緩和と誘電緩和の時定数に顕著な違いが確認された。その結果、アニオンの構造が構造緩和において重要な因子であることが明らかとなった。今年度より新たにイオン液体中でのプロトン移動反応の測定の試みを開始し、溶媒和ダイナミクスとプロトン移動速度との関連の検討をすすめた。具体的にはヒドロキシフラボンの電子励起状態におけるプロトン移動過程を、時間分解蛍光観測によって追跡した。その結果、プロトン移動速度は同じ分子の溶媒和ダイナミクスの時定数よりもプロトン移動速度は速く起こることが明らかとなった。 (2)イオン液体中の並進拡散と溶媒和の検討 イオン液体中での過渡ラジカルの研究において、ケチルラジカルの拡散について理論的な考察をすすめ、イオン液体中でのラジカルの拡散はアニオンの拡散と類似した挙動であることが明らかとなった。また、今年度より新たにヨウ化物イオンの光反応で生じるジヨウ化物イオンの拡散係数をTG法で評価する試みを開始した。その結果、アンモニウム系のイオン液体中でのジヨウ化物イオンの拡散係数を評価することに成功した。さらにイオン液体と超臨界二酸化炭素の混合系を対象とするTG測定システムを、新規購入したレーザーを利用して新たに立ち上げた。高圧の二酸化炭素と平衡状態にある溶液に対してナノ秒のTG測定をおこない、音速度や熱拡散の基礎的データの取得をおこなった。
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